曖昧ミーマイン

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※過去捏造















銃口を寸分の狂いなく相手の急所に突き付ける。迷いはない。社長に牙を剥く者に容赦する必要はなかった。
俺が銃口を突き付けている男は身体中に塞がっていない傷が刻まれていて、それが原因なのか随分と衰弱しているらしい。これが刺客だとも思えないが先に銃を向けてきたのはあちらだ。

「社長、どうしますか?」

男から意識を逸らさないまま社長に指示を仰ぐ。
俺よりも一回りは年上であろう男は銃口を突き付けられているのに恐怖のひとつも覚えていないようだった。その顔に貼付けられている笑みは薄暗い。片目は何があったのか傷付けられていて使い物にならないようだ。

「殺しなよ」

社長が答えるよりも早く、男がそう言った。男に聞いているわけではないから無視をする。同時に気付いた。この男は殺されたいのだ。殺されたいからわざわざ社長に牙を剥いた。望み通り殺してやっても良かったが判断は社長がする。社長は人がいいからきっと殺しはしないんだろう。

「香織、医者に診せるわよ」
「わかりました」

やはりそうなったか。
銃を下ろして男の手を取る。男は抵抗する素振りを見せたが衰弱しきってるようでその力は弱々しい。抵抗を無視して男を担ぎ上げる。軽いというほどではないが重くもない。まさか食べていないのか。

「……そんなにお人よしだと、寝首をかかれるよ」
「俺が生きているうちは社長に傷ひとつ負わせない」
「……いや、俺が言ってるのはあの人だけじゃなくて……まあ、いいや」

抵抗する気も失せたのか男は脱力する。途端に身体にかかる重みが増したような気がした。
今思えばそれが初めの出会いだったわけか。そんなことを考えているとリビングから声が飛んできた。

「香織、今日の晩ご飯何ー?」
「待ってろ。そのうちわかる」

たかだか夕飯のことだけで子供みたいに目を輝かせる米良にそう返す。そんなに楽しみにされたら急がなければなんて気になる。
料理にだけ集中しようと過去を思い出す作業を中断した。過去の話は米良と夕飯を食べながらでもすればいい。


それならば極上の愛を


二人の過去を捏造してみた話。

2011.01.16

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