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「香織、今日はオムレツが食べたいな」
暇で暇で仕方ない雑用をこなしながらそう俺が呟くと黙って雑用をこなしていた香織がこっちを向いた。香織は俺と違って雑用もたいして苦にならないんだろうか。きっとこれも社長のためだ、なんて堅苦しいことを考えているに違いない。そんな真面目なところも好きなんだけどね。
「……仕事中だ。私語は慎め」
「うわあ、厳しい」
そんなにそっちの雑用終わりそうにないの?
そういえば最近雑用ばっかりで護衛の仕事やってないなあ。俺達ボディーガードなんだけどね。
香織は生真面目で能力以上のことをしようとするから雑用みたいに個人でやる仕事は心配。そして結構出来てしまうから厄介だ。しかも香織はそれくらい当然だと本気で思ってる。俺はもっと香織に休んでほしいんだけどなー、なんて愚痴ったらじゃあ米良も真面目にやって俺の負担を減らしてくれ、と淡々と返された。うん、まあ俺は真面目から程遠いけどね。
「だってさあ、最近外食多くて香織の手料理食べてないし」
「まあ、最近はあまり家では食べないな」
「だからさ、食べたいなーって」
書類をまとめて一息つく香織にめげずに声をかける。何度か声をかければ香織は諦めるのか雑談に応じてくれる。そんな甘いところも好きだ。
「オムレツでいいのか?もう少し豪華なものでも問題はないけど」
「いいの。香織のオムレツおいしいし」
「……単純な奴」
あ、照れた。
可愛いなあ、抱きしめたい。でも仕事中だって怒られるのは目に見えてるからぐっと我慢する。
「そうと決まればさっさと仕事終わらせてあがろうか」
「そのやる気がいつもあればいいんだけどな」
「あはははは」
「笑ってごまかすな」
香織に睨まれたのでそれから逃げるために雑用を片付け始めれば香織の目が俺から外れたのがわかった。あ、ちょっと寂しいかも。
どっちが大人でどっちが子供なんだか、っていう。
2010.11.23