曖昧ミーマイン

http://nanos.jp/bisuge/



言わば天然記念物。割れ物注意。取り扱いにはお気を付け下さい。
最近、そんな表示をつけるべきじゃないかと真剣に思う。何に?いや、物じゃなくて。

「……はあ、泣き止めって」

またやらかした。
俺の目の前にはリクが俯せになっていて、見えないが十中八九泣いてる。っていうか、俺が泣かせた。いや、俺がっていうか……まあ、俺なんだけど完全に俺の責任ってわけでもない気がする。

「……泣いて、ないっ」
「いや、泣いてるだろ」

わかりやすい嘘をつかれた。
くぐもっているせいで聞こえにくい。リクはずりずりと頭を俺とは逆の方向へ向ける。俺を見たくないらしい。お怒りのようだ。

「はあ。泣くってなあ……」
「……」

リクは純粋培養でぬくぬくと育ってきている。そのせいかそっちの方向にとことん免疫がない。今日の泣きだってそれが原因。ちょっと強引すぎたせいで驚いたらしい。他人事なら生娘かよ、で済ませるところだがこれは笑えない。リクは否定するだろうが怖かったんだろう。しくじったなあ、と思う。リクに対してその辺りは慎重に行かなければいけないのに。やらかした。

「悪かったって」
「……」

無視か。くっ、腹立つ。下手に出れば付け上がりやがって。ああ、でもここで文句言ったら本格的に喧嘩になる気がする。ここは俺が折れるべきだ。わかってる、わかっているとも。

「今日はもう何もしねえって。だから泣き止め」

何もしないというか、泣かれてまでまだやる気に満ち溢れる奴なんているわけないだろ。今日はもう無理だ。俺はそんなにSじゃない。

「……」

返事がないのは相変わらずだが、ようやくこっちを見た。もう泣いてはないが泣き跡がくっきりついている。なんとかごまかしてから帰さないと駄目だな。

「……」
「な、何だよ……」

無言で睨まれても困る。まだ怒ってるのか、もう許してるのか。それだけでもわからないことには何て言えばいいのかわからない。とりあえずリクが何か言うのを待っていれば、緩慢な動作で腕が伸びてきた。

「……何」
「煙草、寄越せ」
「はあ?」

ようよう喋ったと思ったら何だそれ。理解出来ないが、とりあえず煙草をケースごと渡してみる。するとリクはそれをもぞもぞと懐へしまった。おい。

「俺の純白の肺が汚れる」

どうやら俺の家が煙草臭いのが気に入らないらしい。……なんかこう、いや、コイツなりに場の雰囲気を変えようとしてんだろうけどさあ……。

「お前の前では吸うの自重してやってるだろうが」

それにしたってこの話題転換はどうかと思う。


箱入りお嬢様と煙草


恋愛観の違う星リクその弐

2011.12.30

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -