曖昧ミーマイン

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星の車、というか家に呼び出された。そこまではいい。文句を言いながらも寛大な俺はわざわざ星のテリトリーへと足を運んでやったのだ。感謝しろと威張りたいところだったが星相手にそんなことを言っても喧嘩に発展するだけなのはわかりきっていた。無駄に言い争うくらいなら時には俺が我慢するのも悪くはないだろう、うん。

「で、用ってなんだよ」
「あ?もうちょっとこっち来い。なんで玄関先で用件聞こうとしてんだよ」

入ってすぐのところで俺が足を止めていれば中にいた星は何故か呆れながらもっと足を踏み入れるように促す。玄関先って狭い上に汚くてよくわからないんだよ。
話が進まないのも面倒なので大人しくもう少し奥へと入ることにした。

「お前、相変わらず整理整頓出来ないんだな」

以前にシスターの家で星と村長が散らかしまくっていたので二人に整理整頓能力がないのはわかっていた。腐敗臭こそしないものの少しばかり苛立ちを覚えるレベルの汚さに思わず呆れる。最初から星には何も期待していないが。星は俺の発言が気に入らなかったのか眉間に皺を寄せた。だからなんでマスクなのにそんな表情豊かなんだよ。

「お前は俺のオカンか。っていうかもうちょっとこっち来い」
「え、なんで」

星に面倒臭そうに手招きをされて思わず警戒を滲ませる。そういえば何の策もなしに来てしまったが星は天敵、そしてここは密室。叫べば誰かが気付くかもしれないが助けてくれる可能性は低そうだ。迂闊だった。無理にでも外で話をすれば良かったのか。
今更すぎる失態を俺が悔やんでいると警戒するばかりで一向に動こうとしない俺に焦れた星が俺の腕を引いた。力はない方ではないはずだが突然のことだったのでされるがままに星に引き倒されてしまう。頭の中で警鐘がこれでもかというくらい鳴り響いているがもう手遅れな気がした。

「おい星、呼び付けておいていきなり何がしたいんだよお前は」
「ああ、鈍感なリクルート君はまだ何もわかってませんってか?世の中純粋なだけじゃ渡ってけねーぞ」
「余計なお世話だ。お前に心配されるまでもなく俺は立派に世渡りしてるんだよ。なんたって俺は」
「エリートだからな、だろ。聞き飽きたわ」
「先に言うな!だいたいこの流れと純粋さになんの関係があるんだよ」
「それに気付かない時点で純粋なんだよ」
「はあ?」

星が理解不能なのは今に始まったことじゃないが今回はひどい。何がしたいのかさっぱりわからない。しかも体勢的に見下ろされているのが気に入らない。
どう文句を言ってやろうかと考えていると星の手が怪しい動きを始めた。だからそれを掴んでとりあえず行動を阻んでみる。

「星、お前いい加減何がしたいのか説明しろ」
「言ったらお前面倒臭いじゃねーか」

星に説明する気はないらしく俺の拘束を強行突破しようとする。させてたまるかと俺も踏ん張ってしばらく拮抗状態が続いた。だが阿呆らしくなったのか星が急に手を止める。

「……わかったって、言えばいいんだろ」
「最初からそうしろよ」

いい加減面倒臭くなってきたのか星はようやく理由を話すことにしたらしい。いきなり人を引き倒す理由とは一体なんだ。どんな言い訳じみた理由を言うのかと俺が待ち構えていれば星は淡々と言い放った。

「ムラムラしたから」
「…………は?」
「ムラムラしたから恋人を呼んで押し倒しました。はい、異議は?」
「おっまえ……」

星の思いもよらない方向性の理由に俺は硬直する。じわじわと顔は赤くなってどう反応すればいいのかもわからなくなってきた。その反応を見て星はだから言いたくなかったんだ、なんて漏らす。いや、言えよ!むしろ最初に!
パニック状態だがなんとか手を持ち上げて星を指差す。怪訝な目で俺の指先を見ている星に俺は言ってやることにした。
このアホ天体が!と罵らなかっただけ成長だと思いたい。


段階を踏め!


恋愛観の違う星リク。

2011.04.03

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