曖昧ミーマイン

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僕には時間がないんだ。わかってくれとは言わない。だけど邪魔をするつもりなら誰にだって容赦をするつもりはなかった。

「半兵衛」

不意に、名を呼ばれて僕は一旦思考を止める。
僕を呼び捨てにする人間なんてほとんどいない。それにこの声を僕が聞き間違えるはずもない。

「なんだい、秀吉」

僕が振り向けば、秀吉は難しい顔をしていた。秀吉がそんな顔をするなんて珍しい。何を考えているんだろうか。僕の想像が全く及ばないのもまた、珍しい。

「半兵衛、顔色が悪い。今日はもう休め」
「……」

何を考えているんだろうと不思議に思っていたら、そう来たか。友に心配をしてもらえるのは嬉しいけど、秀吉はそんなことを心配しなくてもいい。その優しさはかけがえのないものだけどいつか弱みになってしまうんじゃないかと心配だ。

「大丈夫だよ、秀吉。それに僕が作戦を立てなくてどうするんだい?」

部下を見下しているわけじゃないけど、現実的に見て僕以上の策士がいないのも事実だ。僕が休んでしまうわけにはいかない。
でも秀吉はそんなことは考慮に入れていないようだった。

「休め」

有無を言わさずだ。これに反抗するのは骨が折れる。
僕は生き急ぐ。それを邪魔するなら容赦しないけど、秀吉がそう言うなら仕方ない。秀吉のために生き急ぐのだから、秀吉が言うなら休息もするべきだろう。

「……秀吉がそう言うなら今日は休ませてもらうよ」

僕には時間がないんだ。それでも秀吉がそう望むなら、たまには足を止めるのもありだろう。


スローモーション。


御題提供元「家出

2011.09.11

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