曖昧ミーマイン

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※転生で学バサ















妙な男が隣の席になった。
重力に反発するかのように立てられた髪は白く染まっていた。髪型にしても髪色にしても手が加えられているのは間違いないだろう。柄の悪い生徒の典型と言ったところだ。机に足を上げたりと態度も典型的。
名は確か長曾我部元親だったはず。妙に個性の強い苗字をしていて、記憶に辛うじて残っていた。苗字だけなら不可抗力だが名前まで戦国武将と同じとはどういうことだ。長曾我部元親のように立派な人間に育ちますように、と祈りが込められているのだろうか。何にせよ図々しいにもほどがある。

「……」
「……」
「…………何だ」

先程から視線が痛い。無遠慮に横から視線を感じる。誰かなんて考えるまでもない。隣には奴しかいないのだから奴に決まっている。無視を決め込んでやっても良かったがあまりに無遠慮に、他意のある視線を興味深そうに向けるものだからついに聞いてしまった。誰とも馴れ合うつもりはないのだから見るな。言外に言ったところでこの男には通じない。

「いや、お前毛利だろ?」
「それが何だ」

そんなことはクラス名簿でも見ればわかることだ。本人に確認することではない。それをする知恵すらないのか、この男は。
心底見下しながら冷たく、それだけ返すが奴は怯むことも気分を損ねることもしなかった。ただ、何か言いたげにしている。それを待ってやる義理もないので会話を終了させて本を開いた。するとまるでそれを見計らったかのようなタイミングで奴が口を開く。

「なあ、毛利元就って知ってるか?」
「……?戦国武将だろう」

何をわかりきったことを。そんなことを知らないとでも思われていたのだろうか。そうだとしたら心外だ。そこから話が広がる様子もないし本当に聞いただけなのだろう。一体何がしたいのか。理解に苦しむ。
まさか、自分が長曾我部元親という丸っきり戦国武将と同じ名前だからこちらにも同じことを期待しているのではあるまいな。生憎ながら元就などという名はしていない。先祖を辿ればもしくは毛利元就となんらかの繋がりがあるかもしれないがさして興味はない。
奴はやはり話題をそれ以上広げることはなかった。ただ、落胆したように肩を落とす。何かが不満だったのか。

「お前にとってあの頃は所詮忘れる程度ってことか」
「……何を言っている?」

奴は、理解が及ばない独り言を零す。
勝手に話を展開しておいて、勝手に閉じてしまうというのはいかがなものだろうか。少なくとも快くは思わない。

「……貴様が何を言っているかは知るところではないがな、貴様と馴れ合うつもりはない」

万が一、友好を深めたいなどという輩であることを想定して一応釘を刺しておく。すると奴は驚いた風だったがすぐに笑みを見せた。顔つきのせいか、凶暴に見える。

「そういうとこだけは同じなんだな」

呆れている。だがそれでいてどこか嬉しそうでもある。
外見からして種族の違いそうな奴の思考など予測出来るはずもない。予測したいとも思わない。
だから今度こそ奴との会話を一方的に終了させて本を開く。時間は出来るだけ有意義に使いたい。

「その生き方、楽しいか?」
「貴様に答える義理はない」

会話をするのはこれで最後だ。次に話しかけられても無視しよう。そう決意を固めたが、結局それから奴が声をかけてくることはなく、その決意は無駄になってしまった。
……まあ、今日に限って言えばの話だが。


終わりの鐘を覚えていないの


前世の記憶がある元親と前世の記憶がない、名前が元就じゃない毛利。
ツイッターにて某方が呟かれていたので許可をいただいて書かせていただきました。

2011.10.05

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