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旦那の純粋ぶりは誰もが知るところだと思う。とにかくあの人は恋愛そのものへの耐性が全くと言っていいほどない。まさか手を繋いでいるのを見ただけで破廉恥認定してしまうとは思いもよらなかった。
そんな旦那が相手だからこそ、進展なんてするわけがない。だから何があるわけでもなく、いつもと同じ生活をしているわけだ。
「ふんっ!はっ!とうっ!」
「旦那もよくやるねえ……」
庭では旦那が日課の鍛練をしていて、相変わらず暑苦しい。あまり近くにいると鍛練に付き合わされかねないので少し離れた縁側で、その様子を見守る。これだけ距離を取ってても旦那が声を張り上げればあっさり声は届いてしまうんだろうけど。
「はああああっ!」
旦那が動く度に汗が飛び散る。かなり体温も上がっているようで、今にも湯気が出そうだった。それを確認してから溜息。旦那は熱くなりすぎると止まることを知らない。これはそろそろ止めるべきだろう。何事もひたすらにすればいいってわけじゃない。
「旦那!そろそろ休憩したらどう?」
この距離で声が届いているかは怪しいが、まあ旦那なら聞こえるんじゃないかと思う。でも旦那が動きを止める様子はない。仕方ない、こうなったら奥の手を使おう。
「団子もあるよ!」
「何っ!?」
あっさり食いついた。旦那はぴたりと動きを止めると、こっちを見た。やっぱり聞こえてたな。
「よし!一旦休憩だ。佐助、茶と団子を持って来い」
「はいはい」
駆け寄ってくる旦那はそれこそ子供のように純粋な目をしていて、思わず抱き締めたくなる。だけど破廉恥だと騒がれるのは目に見えているのでぐっと堪えて、立ち上がった。
「すまぬな佐助」
「いーえ。今から持って来るから大人しく待っててね」
本当に、発展することはあるんだろうか。
一応付き合ってるはずの二人
2012.02.18