曖昧ミーマイン

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俺様は旦那に仕えてるわけだけど厳密にはそうじゃない。俺様の属する組織が旦那の家に仕えているだけ。だから例えばその二つの組織の間に問題が生じれば俺様と旦那の主従関係は消滅する。まあ、簡単に解消されることはないとは思うけど。

「佐助!いるのだろう!出て来い!」
「……えー」

出て行きたくないなあ。なんとなく、大した用事じゃない気がする。いないふりで突き通すにしたって多分旦那にはバレてる。大まかにでも居場所を悟られるのは時間の問題だろう。
仕方がないから木の上から姿を覗かせる。

「む。そこにいたのか」

俺様を見上げる旦那の手にはいくつかの団子が乗せられた皿がある。なんとなく旦那の考えてることが読めた。

「団子をいただいたのでな、佐助も一緒にどうだ?」
「……えーと」

聞かれてるのに何か確定事項みたいになってるのはきっと気のせいじゃない。
普通、忍っていうのは影で主を守るものだ。だから主の方も忍と交流を図ろうとはしない。でも旦那は違う。それ、忍じゃなくてもいいんじゃないのと言いたくなるような用件で呼び出すし、普通に話す。

「毒味、ってわけじゃなさそうだね……」
「何を言っている。早く降りて来い」

ああ、やっぱり拒否権なんてなかった。
なんでよりにもよって忍を誘うんだろうか。旦那だから、と言えばそれまでなんだけど。

「はいはい、今行きますって」

こんな日常がいつまでも続くとは限らない。どこぞの主従と比べれば幾分が薄いこの関係は壊れない保証なんてどこにもなかった。そんなもしもに怯えていても仕方ないのはわかっている。でも居心地が良いばかりにそんなことを思う。いつか、この関係が放棄されるのだろうか。

「その後は特訓に付き合ってくれ」
「えー、旦那の一撃重いんだよね……」
「何を言う。佐助の実力を信用しているからこその全力だぞ?」
「それ複雑。喜ぶべきなんだろうけどすごく複雑」

いくら考えても結論の出ない不安は捨ててしまおう。今はこうして仕えていられるんだし幸せじゃないか。
そう自分を納得させてから、俺様は木の上から降り立った。


僅かにぐらつく足場に


伊達主従が羨ましい佐助。

2011.08.22

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