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「俄雨、手を繋いでもいいかい?」
買い出しの道中、荷物持ちとして付き添ってくださっていた雷光さんがそんなことをおっしゃった。いきなりで、なんの脈絡もなかったけど雷光さんの脈絡のなさには慣れているのでそこまで驚かなかった。ただ、不思議には思う。
「僕とですか?」
「他に誰がいるんだい。俄雨はおかしなことを聞くね」
雷光さんはそう言って苦笑する。僕は何かおかしな質問をしただろうか。
「わざわざ聞かなくても」
手を繋ぐくらいなら公の場でも問題はない。たまに雷光さんは突飛なことをするからそんな時は是非とも了承を取ってからにしてもらいたいけれど。
「私は知っての通りマイペースなところがあるからね。了承をとっていないといつ俄雨にとって不愉快なことをしてしまうかわからない」
「そんなことないです」
雷光さんがすることで僕が不愉快になるなんて有り得ない。雷光さんはとてもお優しいから、そうやって聞いてくださるんだろうけど。
僕の言葉を了承と受け取ったのか雷光さんは僕の手を握る。僕はそれに応えることにした。雷光さんの望みなら、多少おかしな目で見られたってなんとも思わない。
何故かそれだけで上機嫌になってしまった雷光さんは今にも鼻歌を歌い出しそうな中で、口を開いた。
「今日の夕飯は私も手伝おう。いつまでも俄雨に任せきりというのも悪いからね」
「う、え……っ!?」
……それは、勘弁してほしいかもしれない。
2011.11.04