曖昧ミーマイン

http://nanos.jp/bisuge/



私の世界は兄さんが全て。
兄さんの世界は私が全て。
二人で生きて来た私と兄さんはいつしかそんな風になっていた。一概に悪いとは言えないと思う。私は間違っているとは思わないし、嬉しかった。罪悪感が伴わなかったと言えば嘘になるけど。

「おー、リナリーおかえり」
「ただいま。……今日も大変そうだね」
「いやー、エクソシストの任務に比べれば屁でもないさ。……っ、とと」
「倒れる前に休んでね?」

すれ違い様に科学班の人とそんな会話をしてから私は足を進める。どんどん苛烈になってくる戦争の中で私も無傷というわけにはいかなくて、私の身体は至るところに傷が出来てしまっていた。兄さんは玉のような肌に傷が、と大袈裟に騒いだりするから恥ずかしい。
でもこれは戦った証だった。ホームを、仲間を、兄さんを、敵から守った証。それは誇れることだと思う。

「あ、リナリー。おかえり。室長なら奥の部屋にいるよ」
「ただいま。わかったわ、ありがとう」

私がホームに帰って一番に行く場所は決まっていた。それはたいていの人はきっと知ってる。特に科学班は全員が知っているだろう。
私は教えてもらった通り、奥の部屋へと入る。

「兄さ……わ、何これ」

部屋に入った途端に目に入ったのはうず高く積み上げられている書類だった。ちょっと眺めているだけでもどうしようもなく難解な内容だということがわかる。ここはもしかしたら書類倉庫なのかもしれない。そんな風に思ってしまう程度にはこの部屋は書類で埋め尽くされていた。その中で完全に埋もれていた兄さんがもそもそと身を起こした。そのせいで軽い書類の雪崩が起きる。寝てたみたい。

「……んん?リナリー、おかえり」

まだ眠たげな兄さんはそれでも私に微笑みかける。それがどうしようもなく嬉しくて、愛おしくて。
私も飛び切りの笑顔で返すのだ。


「ただいま、兄さん」


帰る場所はいつだってここしかないの


2011.09.20

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -