曖昧ミーマイン

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ユウはあまり喋らない。そもそも会話をして誰かと繋がろうという気が無い。その必要性を感じてない。
それはもちろん相手が俺の時も例外じゃない。話し掛けても大体は無視される。一応聞いてはくれてるんだと信じたいけど。

「なあ、ユウ」
「黙れファーストネームで呼ぶな刻むぞ」

句読点なしで怒られた。たまに本気で刻まれそうになる。それなら大人しくファーストネームで呼ぶのをやめればいい話だがここまで来たら意地というかなんというか。
任務と任務の間を縫ってユウの部屋に入り浸ってみてるわけだがユウはさっきから何も言わない。いや、最初に何しに来たとは聞いてきたけど。適当にはぐらかしたら怒られたけど途中から面倒になったみたいで放置された。ユウってばわかりやすい。

「ずっと部屋に篭って暇じゃねえ?」
「そのうち任務が入るだろ」

最近は、エクソシストの数が急激に減少しているせいで生存しているエクソシストの毎日は任務三昧だ。だからこうしてエクソシストである俺とユウがのんびり出来るなんてことは破滅的に珍しい。ユウにとっては退屈な時間でしかないんだろうけど。

「……」
「……」

しまった、沈黙が出来てしまった。
ユウが喋らないから一方的に喋りかけてたけど話題が尽きそうだ。いや待て、ブックマンの次期後継者の知識量で話題が途切れるなんてことあるわけがない。頑張れ俺。

「……俺はユウが好きさ」

そういえばユウに好きって言われたことがない。まあユウが好きだなんて甘い言葉を口にしているところは全く想像出来ないんだけど。
俺もだ、とかそういう返答でも返って来ないかと若干期待しつつ言ってみた。するとユウはいきなり何言ってやがる、みたいな目でこっちを見てきた。当然ながら照れなんて可愛らしいものは一切含まれてない。

「……」

その無言の正気を疑う視線が痛い。
もう一回繰り返すのも茶化すのもどうかと思ってその視線を甘んじて受ける。いや、マゾとかじゃなくて。さて、この状況をどう切り抜けようか。そんなことを考えているとユウが立ち上がった。

「どこ行くんさ?」
「稽古だ。ついて来るなよ、気が散る」

ここでアレンなら「人がいる程度で集中力がなくなるなんて神田はその程度なんですね」なんて爽やかな笑みで言うに違いない。でも俺はそんな真似はしない。熱心だなあ、なんて感心しつつユウを見送ることにした。それからユウが出て行く寸前にもう一度だけ。

「ユウ、好き」
「……」

一瞥。でも無視された。


過剰なる一方通行


一応ラビユウ

2011.03.19

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