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あたしに寿命はない。だから先に死ぬとしたら人間の方だ。何人も死んでいく人間を見てきた。バクもその内の一人になるのだろうと、漠然と思っていたのに。
「……ありゃ無理かもな」
誰にも聞こえないようにぽつりと漏らす。アジア支部に侵入してきたアクマはレベル3。イノセンスを持ってないあたしには厳しい。
バクもきっとそれをわかってる。だけどアジア支部の人間を守るために、あたしを向かわせる。正しい判断だ。あたしは守るための神で、そのためにいる。
「フォー、頼んだ」
人間でないあたしにばりばり感情移入してるバクは、その言葉を吐き出すのが辛いに違いない。でも泣いてはなかった。成長したなあ。まるで保護者の気分だ。
「おう、任せとけ」
守れるだろうか。いや、守ってみせる。
アレンは止めようとしてるが、今はこうするしかない。
守るために死ぬんなら、本望だ。あたしはそのために存在する。
「じゃあな」
バクに言ってみたが、返答はなかった。
(でもまた会うことになった)
御題提供元「家出」
2013.01.20