曖昧ミーマイン

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最近の室長は働き過ぎだ。いや、ここにいる以上は普通よりは働くのは当然だろうがそれにしたって尋常じゃない。もう何日寝てないのか。仮眠だってとってないはずだ。

「室長」
「ああ、今朝の書類はそこに詰んであるから持って行って」

机にかじりついている室長は俺を一瞥することもない。書類を凄まじい速度で処理している室長の目の下にはくっきりと隈が出来ている。それでも室長は眠らない。いつもなら率先してサボることを考えるというのに一体どういう風の吹き回しだろうか。

「じゃあもらって行きます。後、追加の書類持ってきました」

手にしていた山のようになっている書類を室長の机に積んでおく。そうしている間も室長の手は止まらない。普段は忘れがちだが室長はその肩書きを背負うだけの能力がある。でもいくら能力があったところで人間なのだから限界はある。今の室長は明らかに限度を超えて無茶をしていた。

「室長、アンタ何日寝てないんですか」
「リーバー君も寝てないでしょ」
「俺のはよくあることなんで平気です。話を逸らすな」

俺はいつものことだからいい。室長だって連続の徹夜なんてザラだろう。でも今回ははっきり言って異常だ。徹夜日数が俺から見ても多過ぎる。流石に休むべきだ。

「仮眠とってください」
「みんなが働いているのに室長の僕が休むわけにはいかないだろう」
「限界まで徹夜してる人が何言ってるんですか。三時間くらいなら俺等だけでもなんとかなりますからさっさと寝る!」

書類で埋まりかけている部屋から何とかソファーを発掘する。室長は何か言いたげだったが何も聞かない。どんなことを言われようとも今回に限っては俺の行動は正しいと断言出来る。室長は休ませるべきだ。

「リーバー君ってたまに強引だよね」
「強引にいかないとアンタが動かないからでしょう」

のろのろと動く室長を急かしてソファーに寝かせる。ちゃんとそこまで見張っていないと素知らぬふりで仕事を再開する可能性だってある。

「あ、ちゃんと僕が片付けた書類持って行ってね」
「わかってますから早く休んで下さい」

ソファーに横になると寝ていなかった分疲労が溜まっていたのかすぐに眠ってしまった。俺の判断は正しかったらしい。それを見届けてから俺は室長が片付けた書類を抱えて退室する。

「おやすみなさい」

少しでも長く休めるように俺はいつも以上に働くことにしよう。


世界が揺らぐ前の話


どっちかというとリバ+コム

2011.07.21

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