曖昧ミーマイン

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「甘さがねえ」

突然やって来て我が家の如く寛ぎ始めるのは、まだ我慢出来る。僕は構っているほど暇じゃない。害がないなら放置していても構わないだろう。目立ちまくってやって来た時にきつく苦情を言ったらそれなりに忍んで来るようになったので、妥協してやっている。
いきなり来て持参のチョコを貪り始めたあたりで欝陶しいとは思っていたが、ついに話し掛けられた。しかもチョコに対する苦情だった。

「僕に言わないで。部下に甘いチョコでも用意させればいいじゃない」

ドジをやらかしていないということは近くに部下がいるんだろう。群れてないとこの人はどうしようもなく弱い。そのくせその状態でも平気で僕に会いに来たりする。鳥頭なのか、咬み殺されたいのか。
部下がいる状態なら咬み殺すのは骨が折れそうだ。それを思うと面倒臭い。

「チョコ?……ああ、チョコの話はしてねーって」
「じゃあ何」

チョコを貪りながら言われたらチョコのことだと思うだろう、普通。
要領を得ない発言に早くも苛立ちながら、それでも何とか言葉をかわす。我慢するのは性に合わないが、ここで暴れると応接室が汚れる。片付けは草壁にさせるとしても面倒は面倒だ。だから我慢をしてみる。長くするつもりは毛頭ないんだけど。

「チョコじゃなくて、恭弥の話」
「…………意味がわからないんだけど」

殴らなかった自分を褒めてやりたい。闘いたいのは山々だけど今の僕は案外忙しい。残念ながらそんな時間は今はない。どうせなら僕が暇な時に来ればいいのに。
僕の反応は至って普通。でも相手はそうは思わなかったらしくて不服そうな顔をする。

「俺とお前は付き合ってるんだろ?」
「それが何」

別にその話は今してる話とは繋がらないだろう。でもあっちはそう思ってなくて、続ける。

「それならもうちょっとそれっぽい甘さとかあってもいいんじゃねーの?」

あ、繋がった。
何を考えているのかと思えばくだらないことを。恐らく、この人にとっては重要なことなんだろうけど。
しかしそんな瑣末なことでこの人が機嫌を損ねているのかと思うと面白くもある。このまま流してしまうには惜しい案件だ。だから話に乗ってみることにした。

「ふうん。欲しいんだ」
「……まあ、たまには」

視線を逸らしながらも普通に返された。捻くれた人でもないからそこを素直に返されるのはさして意外でもない。つまらないとは若干感じるが。
素直な物言いに免じて、これ以上捻くれたことを言うのはやめておく。機嫌が悪いわけでもないし。

「甘くしてあげないこともないけど」

何をどうすれば甘いと言えるのかわからないけれど、それは本人に聞けばいいことだし。
そうしたら言い出しっぺは目を真ん丸にしてこっちを見た。

「何」
「…………いや、素直すぎて気持ち悪い」
「咬み殺すよ」

何が面白いのか、ツボにはまったらしく机に伏して震え出す。声は殺しているつもりらしいが殺しきれていない。
……よし、放置でいこう。


いらないの?


丸い風紀委員長

2012.05.11

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