曖昧ミーマイン

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※3225


『恭弥、元気か?』

全くもって時差を考慮していないであろう時間帯に電話をかけてきたのですぐさま通話を終了させてやりたくなった。いっそのこと着信拒否にしてやろうか。苛立ちながらそんなことを本気で考えて実行しようとしていたところで電話の向こうで銃声。

「……何やってるの」
『ん?ああ、ちょっと襲撃受けてて……まあ、そんなことは置いておくとしてだな』

明らかに置いてはいけない問題な気もするが本人がいいならそれでいいか。
ここ最近、ボンゴレファミリーはミルフィオーレファミリーの襲撃にあうようになった。ファミリーの人間だけに関わらずファミリーのメンバーと接触のあった人間も狙われているらしい。つまり、キャバッローネファミリーも例外ではないということだ。大方、ミルフィオーレファミリーの襲撃を受けているのだろう。

『今日は話があってな』
「そう」
『……聞いてるか?適当に相槌打ってる気がするんだけど』
「聞いてるよ」

貴方は話を聞かないと面倒臭いじゃないか。

『それならいいんだけどな。で、本題だ』
「いつも貴方は前振りが長い」

こんな時間に電話をかけてくるのだからよほど重要な用件なのだろう。そうでなければ今すぐ切ってやる。声を聴きたかっただけ、とかふざけたことをぬかした時には咬み殺しに行ってあげよう。
そうこうしている間にも電話の向こうの銃声は大きくなっていく。大丈夫なのか。それでも相手は動じた様子もない。肩書き上これくらいの襲撃は驚くほどのことでもないんだろう。

『俺達付き合ってるだろ?』
「そうだね」
『だからさ、一旦別れようぜ』
「…………一旦ってどういうこと?」
『そこに食いつくのかよ』

向こうで苦笑する声が聞こえたが今はそんなことはどうでもいい。

『どういうことも何も。ほら、ミルフィオーレが襲撃仕掛けてきてるだろ』
「それで?」
『話によるとボンゴレファミリー関係者が狙われてるそうだから。ほら、雲の守護者の恋人ってことで俺が狙われないとも限らないわけだ』
「僕の恋人である以前に貴方は関係者でしょ」
『まあそうなんだけどな、念には念をってことで。どうせしばらくはろくに連絡も取れないだろうし』
「……それもそうだね」

僕はこまめに連絡を取る方ではないし、こういう事態になれば尚更だ。この人に割いている時間があれば並盛に割きたい。一旦というなら今の関係に固執する必要はなかった。

「一旦でも僕を振るからにはそれ相応の詫びは考えてあるんだろうね」
『この問題が解決した暁には一日貸し切ってお前と全力で戦ってやる。夕飯は高級店での和風ハンバーグ』
「悪くないね。昔、同じ手を使われたような気もするけど」
『気のせいだろ』

ボスのくせに甘くてなかなか本気を出そうとしないこの人と全力で戦えるのは好条件だ。断る理由はない。

『じゃ、話が纏まったところで切るぞ』

それは好きにすればいい。いつも勝手にかけてきて言いたいことを言いたいだけ言って切るんだから。

『元気でな、恭弥』

その言葉だけを聞くと最期の言葉みたいだ。まあ、この人があっさりやられるなんて思ってないけど。
こっちの応答を待つこともなく通話は終了する。微妙な時間に電話がかかってきたせいで眠いけど二度寝する気にもなれない。

「……あいつらはどうやって咬み殺そうか」

ミルフィオーレだか知らないけど約束をとりつけたからには早急に咬み殺さないと。なんだかあの人の策にはまっているような気がしたけど気のせいだと思うことにした。


束の間の契約破棄


捏造ばっかり。

2011.08.25

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