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「そういえばあなた、最近よく来るね。暇なの?」
俺が訪ねてくると同時に(表には出さないが)嬉々としてトンファーを構えた恭弥と一戦交えてから休憩に入っていると恭弥が不意にそう問い掛けてきた。
「なんだ、気付いてたのか。並盛のことにしか興味がないのかと思ってたんだが」
「最近よく闘ってると思ったら、あなたが頻繁に来てたからだったんだね」
「そっちかよ」
まあ、恭弥が普通にそんなことに気付くとは思っていなかったが。
「じゃあ最近やけに機嫌が良かったのはよく闘ってたからってわけか?」
弟子が嬉々としているのは嬉しいことではあるのだが、闘うことに喜びを感じているのは複雑だ。普通師匠に会えたから嬉しいとかそういうのじゃないのか。いや、恭弥にそんな普通の人みたいな感覚を期待しているわけでもないんだが。
「……どうなんだろうね」
「ん?」
てっきり肯定が返ってくるものとばかり思っていたので意外な返答に戸惑う。恭弥も恭弥で珍しく返答の仕方に困っているようだった。
「あなたは騒がしくて落ち着きがなくて、欝陶しくて仕方ないんだけど」
「……そこまで言うか」
確かに恭弥が好むような性格ではないだろうとは思ってはいたがそこまではっきり言われると傷付く。どう反応をとればいいのか迷ったあげく、苦笑すれば本気で困惑しているらしい恭弥と目が合った。
「それなのに、僕の機嫌がいいのはどうしてだろうね」
……そんなの、俺が聞きたい。
無自覚な話。
御題提供元「高感覚英雄劇。」
2010.10.10