曖昧ミーマイン

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※3225


俺の恋人はとてつもなく気まぐれだ。
何を思ってか、数日通いつめたかと思えば半年近く音信不通になったりする。昨日なんかはいきなりおしかけてきて(戦闘的な意味合いで)襲われた。しかも俺が忙しいからって言ったら戦わないならこれ燃やすとか言って書類を人質にとりやがった。なんて卑怯な。

「何考えてるの」
「お前のことだって」
「そう。歯の浮く台詞をよく堂々と吐けるね」

その歯の浮く台詞以外だと機嫌を損ねるくせによくもまあそこまで可愛いげのない台詞が吐けるもんだ。
いつものようにいきなり部下達の警備を強行突破して俺の部屋までやって来た恭弥が何を考えてるかなんて俺にわかるわけがない。多分、コイツが考えてることをなんとなくでも察することが出来るのは恭弥の部下の草壁くらいだろう。

「何考えてるの」
「ちょっとな」
「……」

ほら、不機嫌になった。
流石に草壁の名を出したら後日草壁が悲惨な目に会うだろうから、そこはやめておいた。本当は、恭弥とこうして喋ってる時間も惜しいんだが仕事が忙しいからと言って理解を示してくれるほど恭弥の物分かりはよくはない。というか、頑固で我が儘なだけなんだろうが。

「で、我が愛しの雲の守護者は何の用できたんだ?」

わざわざ恋人、と言わなかったのは照れ臭いからだ。三十路越えて恋人と軽々しく口にするのはなんとなく、恥ずかしい。
恭弥はと言えば守護者と言われたことが気に入らなかったようで眉間に皺が寄った。おお、その顔怖いぞ。

「貴方のそういう遠回しなところ、割と嫌いだよ」
「俺はお前のそういうツンデレなところ割と好きだぜ」
「咬み殺されたいの?」
「まさか」

恭弥がトンファーを構えたから、両手を挙げて降参。
流石にいくら恭弥相手とはいえこれ以上時間を割くのはまずいかな、と考え始めていると恭弥がトンファーを構えたまま歩み寄ってきた。

「きょ、恭弥?まだ怒ってんのか?あれは言葉の綾っつーか、いや、嘘じゃねーけど。別に嫌いだって言ってるわけじゃねーんだし、」
「うるさいよ」

恭弥が俺の目の前まで来て両手を広げたから、てっきりトンファーで殴られるものだとばかり思ってたのに、現実はそうではなかったらしい。

「……あれ?」

手を回すようにして俺に抱き着いてきた恭弥に俺は目を白黒させる。……あ、あれ?

「……恭弥、熱でもあるのか?」
「何それ。馬鹿にしてるの」

俺は椅子に腰かけたままで、恭弥は少し屈むようにして俺に正面から抱き着いて…………なんだこの図。
ぎゅう、って抱き着く力が強くなった。何も言うなってことか。
それから恭弥の気の済むまで好きにさせてやろうと五分くらいそのままにしてれば、ようやく満足したのか恭弥が俺から離れて行った。

「じゃあね」
「え、まさかこれだけのためにわざわざイタリアまで来たのか?」
「悪い?」

照れる様子もない恭弥は自分で無理矢理切り開いた道を歩いて戻りながら、一回だけこっちを向いた。

「たまには恋人らしいことをするのも悪くないと思ったんだよ」

そう言ってまた歩き出した恭弥の携帯から恭弥が何よりも愛する並盛中学校の校歌が鳴り響いて、恭弥も実は結構忙しかったのかもしれないなんて今更ながらに思った。


斜め上を行く我が愛しの


1522ではないのは1522だと若すぎてこんな素直な会話が出来ないと思ったから(特に雲)
雲は思考回路が理解されにくい人

2010.07.15

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