曖昧ミーマイン

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俺は醜い。狭量で嫉妬深い。
それとは対照的に綱海さんは寛容で負の感情とは無縁のところにある。

「綱海、今日は夕飯に人参が出るらしいぞ!」
「げ。……まあ、頑張る……か」
「顔青いぞ」

練習を終えて、俺達は食堂へ向かう。前方ではちょうど円堂さんと綱海さんが話していて思わずもやもや。
もやもやの正体は嫉妬だ。それくらいは自覚している。でも自覚したからといってどうにかなるものでもない。もやもやは消化することも吐き出してしまうことも出来なくて日に日に蓄積されていく。どうすればいいんだろう。嫉妬ひとつに振り回されている自分が情けない。

「俺はちょっと監督に呼ばれてるから後で食堂には行くな」
「おう、わかった」

呼び出されているらしく円堂さんは走り去って行ってしまう。円堂さんが綱海さんから離れたことに安堵している自分がいて、自己嫌悪。小さな自分が嫌になる。

「立向居」
「っ、はい!」

でろでろと自己嫌悪に浸っていた間に綱海さんは俺の前に立っていた。数歩先を行っていたところ、わざわざ戻って来てくれたらしい。すっかり悪い意味で自分の世界に入り込んでいた俺は反応が遅れる。思わず背筋を伸ばしてしまった。綱海さんは不審そうにしたもののそこに触れてくることはなかった。

「今日人参だってよ」
「そうですね」

さっきそれは聞いてました、とは言えないので頷いておく。考えてみれば俺がその会話を把握していてもなんらおかしくはないのだけれどそれを言えば見透かされてしまいそうで。そんなはずはないのに。

「まー、でもカレーだしな」
「カレー、おいしいですよね」

俺は醜い。でも、それに気付かない綱海さんは快活に笑いかける。太陽みたいなその笑みを向けられる度に、醜さが浮き彫りになるようで。

「ん?どうかしたか?」
「いえ、ちょっと練習疲れしたみたいで」
「そうか?ちゃんと休めよ」

それでも綱海さんに気付かれてしまうのは嫌だから、俺は何事もないように笑う。

「はい、そうします」

笑う、笑う。


臆病者の世界の終わりの定義


嫉妬深いたちむかい。

2011.09.09

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