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「おい相馬、これはなんの真似だ」
「ん?何が?」
「何がじゃねえよ」
不法侵入だとか、コイツに訴えるのはとても無意味な気がして何も言わないでいればコイツは借りてきたらしいDVDをセットし始めた。もうなんで俺の家がわかったんだとかそういう些細な疑問はどうでもいい。いきなりDVDをセットして、あまつさえそれを再生し始めるという奇行もこの際何も言わないことにしよう。それよりも俺には言いたいことがある。
「それは俺に対する嫌がらせか?」
相馬が再生し始めたDVDの内容は、いわゆる恋愛モノ。他の男が好きなヒロインを主役が振り向かせるというもので、これは絶賛片想い中の俺に対する嫌がらせに違いない。アタックしろってか。
俺が機嫌を損ねたのを見て相馬はにっこりと笑みを作る。……あれは俺の不幸を楽しんでる顔だ、間違いない。
「嫌がらせじゃないよ。なんて言えばいいかなあ……」
うーん、と考える素振りを見せる相馬はやっぱり楽しんでるようにしか見えない。
「佐藤君にアタックしろって言ってるんじゃないよ。これはどっちかというと……宣戦布告かなあ」
「ますます意味がわからねえんだが」
俺が困り果ててそう返せば相馬は何故か楽しそうに「佐藤君はそれでいいんだよ」と言って例の裏の読めない笑顔を見せた。
君をこれから振り向かせるよっていう。
相→佐→やち、が基本形だと思います。
2010.06.12