曖昧ミーマイン

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普段、真選組に女っ気はない。それでも何処かから出会いを見出だして所帯を持つ猛者もいるのだが、ほんの一握りに過ぎない。だいたいの者は女に飢えている状態だ。そんな中で今日くらいは救いがあっても良さそうなものだが、世の中そんなに甘くない。

「よいっしょ!」

掛け声と共に、中身を詰めたダンボールを抱え上げる。それほど重くもないのだが、心が重い。何で俺がこんなことしなきゃいけないんだ、とか。まあ、それはうっかり宅配便の応対を俺がしてしまったからだ。迂闊だった。
いくら愚痴を零してみたところで、俺がやるしかない。こうなったらさっさと片付けてしまおう。何度か往復しなければいけないが仕方ない。それを考えると憂鬱になって来る。と、そんな俺の目の前に元凶の一人がやって来た。

「あ」
「……甘い匂いがするな」

煙を常に纏って移動する副長は、露骨に表情を歪めた。この人は甘味があまり好きではないのだ。だからわざわざ口にしようと思わない。普段は支障があるわけではないが、この時期に限っては困った。

「ああ、今日か」

どことなくうんざりしたように副長はそう口にする。甘味が苦手な副長にとってこの時期は苦痛でしかないのだろう。何せ街が甘い匂いで包まれてしまうのだ。それも今日で終わりだが。

「モテモテだな」

至極どうでもよさ気に、俺の抱えているダンボールを一瞥してから副長は言う。本人に他意はないのだろうが、皮肉のように聞こえてしまうのは致し方ないだろう。
どう返したものか。そんな風に考えるものの、気の利いた返しなど思い付くはずもない。だから何の捻りもなく返した。

「副長に届けに行く途中なんですけどね」

俺の返しを聞いた副長は、表情を歪める。この人はバレンタインにいくらモテようと興味はないらしい。むしろげんなりするようだった。

「……総悟のところにでも運んでおけ。アイツなら食うだろ」
「いいですけどね、いつか罰が当たっても知りませんよ」
「そりゃ楽しみだ」

そう言って偽悪的な笑みを作る上司は、甘味を自ら消費するつもりはないらしい。


有罪判定懲役無期


バレンタインだけモテる土方(と沖田)


2012.02.09

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