曖昧ミーマイン

http://nanos.jp/bisuge/



結局のところ、俺達は矛盾しているのだ。
そして自覚している。だが、表に出すことはない。何があっても表に出すわけにはいかなかった。

「近藤さんは」
「姐御のところでさァ」
「飽きもせずによくやる……」

呆れたように呟く土方さんの頭痛の種は厳密には何なのだろうか。真選組局長ともあろうものがストーキングに勤しんでいること?違う。

「あの粘り強さはある種感心させられますよねィ」

恋に生きる近藤さんが新しく好きになったのはキャバ嬢だった。これがまた随分と年下で、俺と同じ歳ときた。それを知った時の土方さんの深い溜息を俺はよく覚えている。まあ、確かにその十近い歳の差はどうなんだと思わなくもない。
どうせ今回もあっさり振られて新しい恋を見つけるのだろう。そんな風にたかを括っていたけれど今回は違った。近藤さんは何度手酷く拒否されてもしつこく食い下がり続けている。

「訴えられたら終わるな」
「ええ、真選組もろとも」

ここしばらく、土方さんの機嫌は壮絶に悪い。近藤さんの前だとそれはかなり鳴りを潜めるが、それでもひどい。
土方さんは気に入らないのだ。よく知らない小娘に真選組と近藤さんの生命線が握られている現状が。土方さんにとってそのふたつは何にも代えがたいもので、だからこそ苛立っている。まあ、面白くないという点では俺も同じだ。でも俺の場合は土方さんみたいに理屈っぽいことじゃない。いや、土方さんの苛立ちも突き詰めればそこに行き着くんだろうが。

「何びびってんです?」
「あァ?」

俺達は怖いのだ。
近藤さんは守るものが多ければ多いほど強くなれる人で、でもだからこそ危険も孕んでいた。大切なものが多いからこそ、いつか真選組を手放してしまうのではないか。それはつまり、俺達を手放すことだ。俺達はか弱くはないし、血縁でもなく、明確な立ち位置があるわけじゃない。不確かでもいいと思っていたくせに、こういう時に不安になる。

「それはお前だろ」
「俺は餓鬼だからいいんでさァ」
「何だその理屈」

近藤さんの幸せを願っているくせに、どうでもいい独占欲が顔を出す。近藤さんを取られるような気がして。
そんなことを口に出せば近藤さんが困るのはわかっているから言わないけど。言えないからただ共有するだけで。それがどれくらい無意味なことかはわかっているつもりだ。

「あー、いっそ俺が女になって近藤さん落としやしょうか」
「……お前なら出来そうで怖ェよ」

結局、邪魔なんて出来るはずもなくて。でも全面的に応援が出来るわけもないから俺達は傍観する。

「今回は上手くいきやすかねィ」
「無理だろ」

泣いて帰ってくる近藤さんを慰める言葉だけを用意して、待つ。


相反矛盾の共犯者


近→妙に対するふたりのもやもやとか

2011.11.06

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -