曖昧ミーマイン

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土方さんの傍に寄れば、土方さんはまるで当たり前みたいに私の頭を撫でる。それをうっかり心地よく思ってしまっているからこそ、私はよく土方さんのところでサボっているのかもしれなかった。
今日も私は土方さんの横腹に頭を預けてだらだらと過ごす。土方さんは真面目な方でもないから咎めない。というか、咎めるのは永倉くらいだ。

「土方さん、近藤さんの見合い攻撃なんとかしてくれませんか」
「俺だって毎日のように見合い持ち掛けられてる」

近藤さんはよく見合い話を持ち掛けてくる、主に私と土方さんに。付き合っている相手はいないし、近藤さんとは昔からの馴染みだからだろう。結構余計なお世話だ。

「私まだ十八ですよ?」
「十八はもう女だろ」
「じゃあ土方さんは私にムラムラしたりするわけですか」
「はっ。胸育ててから出直して来い」

鼻で笑われた。歯に衣着せぬ言い方にカチンと来て、思わず背中に平手打ちを食らわす。顔じゃなかっただけ感謝してほしい。

「いってェェ!」
「セクハラですよ。訴えられたいんですか」

それだけ言って、頭をまた横腹に戻す。私の定位置だ。土方さんもそれを払いのけることはなく、また頭に手を置いた。それから撫でる。と、いうよりは髪をいじくり回されている気がする。

「お前が変なこと言い出すからだろ。誘導尋問か」

片手で私を撫でて、もう片手で書類を片付ける。器用だなあ、と思う。この人は適当なくせに器用貧乏だ。なんというか、色々矛盾している人だと思う。
髪を撫でる手は一房掴んだかと思うと一本だけをしつこく弄り回してみたりする。何がしたいのかわからない。

「土方さん、知ってましたか」

土方さんは返事をしない。いつものことだから、構わず続けた。

「男の人は好きな女の人の髪しか触らないそうですよ」

淡々と、そう言えば土方さんの手が止まる。書類を片付ける手も私の髪を触る手も。私から土方さんの表情は見えない。でも見えたところでたいして変化はないだろうから見えなくても問題ない。

「その理屈で行くと俺はお前のことが好きだってことになるわけか」
「その理屈でいけば、ですけどね」
「へえ」

どうでも良さそうに、土方さんは相槌を打つ。実際どうでもいいんだろう、私に誤解されたとしても。でも見くびらないでほしい。私は誤解なんてしない。

「でもね、土方さん。私、知ってるんですよ」

やっぱり土方さんは何も言わなかったので勝手に続ける。

「土方さんは好きな女の人の髪は絶対触らないでしょ」

これは牽制でもなんでもない事実。何の主義かは知らないが土方は好きな女の人の髪には触らない。土方さんを何気なく観察し続けていた私だから言えることだ。
土方さんが突き付けられた事実に動揺することはない。自覚があったんだろうか。だけど少し、楽しそうにしている。何が楽しいのかまでは流石にわからないけど。

「そうだな」

肯定。笑う。
それから土方さんはわざとらしく私の髪をぐちゃぐちゃに掻き回した。


定石は崩れるものです


両片想いなようでいて全くお互いを恋愛対象に見ていない二人。
初期近藤さんが見合い話ばかりしているのは公式。
あとは捏造。

2011.10.12

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