曖昧ミーマイン

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「晋助様、今日はいい天気っスね!」

晋助様が甲板に出ていることに気付いた私は出来るだけさりげなく自分も甲板に出てから声を掛けた。晋助様はいつものように煙管を吹かしている。クールで素敵っス!

「あ、そういえば今夜は満月らしいですから月見とか出来そうっスね」

晋助様はよく夜に甲板に出ては月を眺めていたりするから月が好きなんだろうと思う。いや、こうして真昼にも空を眺めているから空が好きなのかもしれない。情緒がある晋助様も素敵っス!

「月見、か……」

ここで初めて晋助様が反応してくれた。晋助様はあまり多弁な方ではないから会話が弾むことはないけれど反応をしてくれただけでも私には充分だった。無駄に言葉を発さないところも素敵っス!

「月見団子くらいなら用意させるっス。あ、でも月見の秋にやるものっスかね」

思いつきで言ってみたけど考えてみればすごく季節外れな気がする。月なんて毎日のように出てるんだからいつしたっていいと思うけど晋助様もそう思っているかまではわからない。
晋助様は煙管を吹かしながらしばらく考えていたようだったけれど不意に踵を返して歩き出した。

「月見団子はいらねェ」
「……そっスか」

月見は却下か。秋になったらまた言ってみようか。でもしつこいと晋助様に思われたりしたら私はどうすればい、

「来島」
「は、はいっ!」

突然呼ばれて心臓が跳ねる。そういえば名前を呼ばれるのは何日振りだろう。いや、攘夷志士の活動に関することでなら呼ばれるけどそういうことじゃなくともっとこう、プライベートな呼ばれ方というか。

「月見団子はいらねェ。が、月見はするから今晩ここに来い」
「……私もいていいんスか」
「一人で月見してもつまらねェだろ」
「そ、そうっスね」

月見に誘われてしまった。私の意思を確認することなく晋助様は甲板からいなくなってしまっていて、断ることは出来そうにない。いや、断るはずがないけど。

「……よしっ!」

何事も言ってみるものだ。思わずガッツポーズをとったところでそういえば武市変態に呼ばれていたことを思い出した。

「あー、忘れてたって言ったら面倒臭そうっスね」

どう言い訳してやろうか。いっそ開き直るとか。そんなことに考えを巡らせながらも私の頭にはしっかりと今晩の予定が刻まれていた。


私たちはいつまでも青と白に見下ろされるしかない


御題提供元「高感覚英雄劇。」

2011.08.02

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