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「ねえ阿伏兎」
彼がひどく陽気に名前を呼んだ。こんな時はたいてい良くないことが起きる。けれど無視出来るはずもなく、返事をしながら目をやった。
すると彼は何が楽しいのか笑みを貼り付けている。
「なんですか、団長」
嫌な予感しかしない。
そんな予感を裏切ることなく彼はいつもと変わらぬ笑顔で言った。
「始末書よろしく」
「……はい?」
ぽん、と肩を叩かれた。彼はそのまま一瞥もくれることなく出て行く。……意味がわからない。わからない、が始末書と言うからには何かしでかしたのだろう。
「……何やったのかくらい教えていけ。すっとこどっこい」
彼にはどうせ聞こえていないだろうから、そう呟いてから深い溜息を吐き出した。
阿伏兎はひたすらに振り回される苦労人希望。
拍手再録。
御題提供元「高感覚英雄劇。」
2010.06.12