曖昧ミーマイン

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問題の多い真選組は、幹部が呼び出されることが少なくない。そして今回も呼び出し。局長直々に出向くまでもないと判断したので、今回は単身だが。

「……遅くなったな」

確か到着したのは昼頃だったはずだ。しかし解放された今はどっぷりと日が暮れてしまっている。小言を言うにしても限度があるだろうに。まあ、天人絡みの建築物を壊してこの程度で済むなら安いだろうとは思うが。それでも苛立たないかと言えば嘘になる。今から屯所に帰っていたら結構な時間になる。正直面倒臭い。それでも帰らないわけにはいかないので、車へと足を向けるわけだが。

「ん?」

ふと携帯が震えた。ポケットから取り出して開いてみると、着信。近藤さんからだ。狙ってたようなタイミングだな、と思いつつもそれに応じた。

「もしもし」
『あっ、トシ。もう終わったのか。お疲れ様』

その声に焦りはない。緊急の用ではないらしいことに、とりあえず安堵。ざくざくと車へ足を運びながら落ち着いて会話を続けた。

「おう。何かあったか?」
『トシが思うような何かはなかったんだけどな』

苦笑する気配があってから、続ける。

『空、綺麗だぞ!』
「……は?」

思わず硬直してしまう。空?電話して来たかと思えば、空?

『トシのことだから空見上げたりしてないんだろうなと思って。あ、今外?』
「ああ、外だ」
『じゃあ見上げてみろって!綺麗だから!』
「……」

くだらない、とは思う。でもあんまりにも見上げろ見上げろとしつこいもんだから、渋々見上げた。

「……うお」

江戸の空だ。どうせ大したことないんだろうと思って見上げた。それなのに予想に反して空は綺麗だった。真っ暗な空にきらきらと輝く星が幾つも散りばめられている。
思わず息を呑んでしまったのだが、それがあっちにも伝わってしまったらしい。光の速さでテンションが上がった。

『なっ!なっ!?綺麗だろ!?』
「……確かに綺麗だけどな。ってかうるせ……ボリューム落とせ」

そんなに嬉しいか、よくわからん。

「で、アンタそれだけのために電話して来たのかよ」

わかりきっていて、そんな言葉を吐く。相手がツンデレなら尖った言葉が返って来そうなものだが、近藤さんはツンデレとは無縁なので。

『トシと一緒に見たかったんだけど、曇るかもって思って』

そうやって、さらりと殺し文句を吐く。こういう時はつくづく思うが、この人はなんでモテないんだろう。

「……そりゃどーも」

この人は、その一言でこっちがどれだけの打撃を受けてるかわかっちゃいないんだろう。わからなくてもいいが。

「今から帰るから遅くなる。ちゃんと歯磨いて寝ろよ」

照れ隠しに小言を言って、会話を終了する。……さて、張り切って帰るとするか。


星魚


タイトルは直訳で


2013.03.17

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