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「風鈴をもらったんだ」
あまりにも嬉しそうに話すものだから誰からもらったのか見当がついた。
「そりゃよかったな。爆発しねーことを祈るわ」
「……なんでわかったんだ」
「いや、爆発したのかよ」
風鈴がどうやったら爆発するんだよ。爆発した風鈴なんでかけようとしてんだよ。危ねーだろ。
「近藤さん、悪いことは言わねーから、それ飾るのは」
「コイツな、綺麗な音出すんだよ」
近藤が風鈴を突けば、ちりん、と澄んだ音がした。ああ、確かに綺麗な音だ。
「……だからって危険物自ら置くなよ」
「だって、お妙さんからの初めてのプレゼントなんだもん!」
「もんってアンタ……」
いい歳した野郎がなんて口調を、なんて言いかけた瞬間、ちりんと風鈴が風に吹かれて鳴った。同時に色んなことがひどく馬鹿らしく思えてきてしまって。
「……今年の夏だけだからな」
「えー」
「えーじゃねえ!これでも譲歩してやってんだ!」
あれこれと言い訳をして嫉妬を正当化しようとしているのを見透かしたように、風鈴はまた、ちりんと澄んだ音で鳴いた。
拍手再録
妙←近←土
夏らしく風鈴
御題提供元「高感覚英雄劇。」
2010.06.12