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ぎゅう、と背骨が軋まんばかりに抱きしめれば痛いと抗議があがったがそれだけで抵抗らしい抵抗はなかった。
「何だよ急に」
「んー、なんとなく」
「なんだそれ」
直前まで書類の処理をしていたせいか、トシの手にはペンが握られていてその手をどうしたものかと迷っているのかふらふらと定位置を探している。
「トシ、手回して」
「ペン持ってるんだよ。回したらアンタの服が汚れる」
「別にいいよ」
「アンタはそうかもしれねーが駄目だ」
トシが頑なにそう拒否するので持っているペンをひょいと取り上げた。それから机上に向かって放り投げる。放物線を描きながら宙を舞ったペンは机上に着地して少し転がった。
「投げるなよ」
「まあまあ、いいじゃねえか」
屈託なくそう笑いかければ抗議も馬鹿らしくなったのかトシは黙って手を回した。思い切り、というわけではなくて本当に回しただけ、といった感じの手に不満を覚える。
「トシー」
「んだよ」
「もうちょいぎゅーって」
「アンタ今平仮名しか喋らなかったろ」
「はい、ぎゅー!」
「……人の話聞けよ」
何を言っても聞かないとわかっているのかそれ以上何か言うのは諦めて、そのかわりに深々と長い溜息をついてかたトシは回した手に力を入れた。
「これで満足かよ」
気恥ずかしいやら面倒臭いやらで投げやりになっているトシがそう問うので強く抱きしめて肯定すれば本日二度目の痛いという抗議が上がった。
土方は近藤の要求を跳ね退けないよねって話
2010.10.29