曖昧ミーマイン

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「こ、んどうさん……」

苦しいという控えめな訴えを無視して抱きしめる力を強めれば、諦めたのか訴えがなくなった。

「で、いきなりなんなんだよ」

わざと目を合わせないようにしながら土方はそう問う。理由がわからずとも抱きしめられること自体は嫌ではないらしく、耳朶まで真っ赤になっている。その反応だけで愛されていることを確認出来てどうしようもなく嬉しい。

「いや、トシ最近寝てねーだろ」
「んなことねーよ」
「トシ、俺に嘘つくのか?」
「うっ……」

少しだけ責めるような言い方をすれば土方は言い淀む。あー、とか、うー、とか母音を吐きながら目が泳ぐ。可愛いと思うが口に出すと更に顔を真っ赤にして可愛くないと喚くので心の中にだけ留めておく。

「目の下に隈浮かべて何言っても無駄だぞ」
「……隈、出来てんのか」
「おう。出来てる出来てる」

はあ、と吐き出した息からは疲労の色が見え隠れする。それでもまだ山積みの書類を気にかけている土方に思わず溜息。すると腕の中の土方がビクリと震えた。

「な、何か俺変なこと……したか?」
「へ?」
「今溜息ついただろーが」
「え?あ、ああ……そのことか。いや、トシがあんまりに仕事熱心だから」
「アンタが不真面目なんだ」

心外だとばかりに訴える土方の瞼は眠いのか落ちかけている。多分今頃仕事熱心な理性と睡眠を欲する本能がせめぎあっているのだろう。そこで本能を勝利させるべく土方の頭を撫でる。

「トシは寝なさい。書類は俺と総悟と山崎でやっておくから」
「アンタと総悟の組み合わせが不安なんだが……」
「大丈夫だって。山崎もいるし」
「……」

こくこくと土方の首が揺れる。どうやら本能が勝ち始めているらしい。

「はい、寝る寝る」
「ん……」

本能の勝利。
土方の瞼は完全に落ちた。それを確認してから軽々と土方を抱え上げて布団へと運んでいく。

「おやすみ、トシ」

囁くようにそう言うと土方の表情が少し柔らかくなったような気がした。


インソムニア


近藤の近くでだけ安心して寝てればいい。

2010.05.27

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