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愛とはなんぞや。
ここ最近、平介は何故かそんなことを至極真面目に考えているらしい。何故か、じゃないか。原因ははっきりしてる。原因はえらくヘビーに物事を捕らえる海藤とか言う後輩だ。
俺としてはそろそろその話は横に置いてしまいたいところだが、平介はまだ考えているらしい。あの平介がそんな哲学的な疑問の答えを出せるとも思えないが。
で、問題はもうひとつ。そんな哲学なことを考えているのは平介だけじゃない。
「愛とはなんぞや」
「……お前もか」
佐藤が面白がっているのは知っていた。珍しく平介が思い悩んでいるのが面白いのかもしれない。そういう理由ならわからなくもない。
「知らねーよ。そんなもん、人それぞれだろ」
愛に決まった形はないだろ、だとか言ったらロマンチスト認定されそうな気がする。
「でも平介は形あるものを求めてるんじゃないの?」
「アイツのことまで俺が知るかよ。そんなに気になるならそれっぽい言葉並べておいてやれよ」
俺には関係ないことだ。関わろうとすら思わない。
だが佐藤は関わる……というかちょっかいを出す気満々だった。今だって俺に言われた通りにそれっぽい言葉の羅列を探してるんだろう。コイツもまあ、よく飽きないな。
「あ、じゃあこんなのは?」
何かいいものが浮かんだらしく、佐藤はそれを口にする。俺は興味ないんだから平介に聞かせてやれよ。
そう思うが、そんな俺の気持ちになんて佐藤は気付いてないみたいだった。
それっぽい愛の定義
御題提供元「家出」
2012.07.13