曖昧ミーマイン

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「あ、傘忘れた」

昼から降ると天気予報は断言していたのに、うっかりやってしまった。案の定外は土砂降り。あー、やっちまった。

「鈴木、傘忘れたんだー」
「鈴木が忘れ物って珍しいね。忘れ物って言っていいのか微妙だけど」

のほほんとしてる平介と佐藤は当たり前みたいに傘を持ってた。いや、今日傘を持ってないのは俺くらいなんだろうが。この二人が持って来てるのに俺が忘れたって事実が面白くない。

「置き傘とか……」
「ねえよ。小学生か」

のたのたした眠そうな喋り方しやがって。いつものことだが、今回は殺意が沸く。
傘が無いなら濡れて帰るしかない。傘持ってるからってのんびりしやがって。

「平介、お前俺に傘貸せよ」
「いやいや、それ俺が濡れるから。鈴木さん、最近殿すぎやしませんか」
「何だよ殿って」

こうして話していても埒があかない。このままだと濡れ鼠だ。さて、どうしようか。どうするも何もどうしようもないんだが。諦めるしかないんだろう。
教科書が濡れるのは痛いが、持って来てなかった俺が悪い。もういっそ教科書は学校に置いて帰ってやろうか。

「あ、じじ先生なら傘くらい持ってるかも。聞いて来る」
「はあ?いいって……おい、平介!」

話を聞かない奴はさっさと教室を出て行った。何でこんな時だけ行動が早いんだ。

「行っちゃったね」
「ったく、いいって言ってんのに」

行った以上、帰って来るのを待つしかない。面倒だが置いて帰るほど鬼じゃない。

「じじ先生、傘持ってると思う?」
「どうだろうな。持ってたとしても素直に貸してくれるか怪しいし」

持っていたとしても使えるものなのか。まあ、何にせよあまり期待はしない方がいい。
これ以上雨が酷くなることはないだろうから、弱くなることを祈って待ってみる。無駄だろうが。

「鈴木」
「あ?」
「傘なかったら入れてあげる」
「何で」

野郎の相合い傘ってどうなんだ。一瞬冗談かと思ったが、佐藤は大真面目らしい。疑問を持った俺の方がおかしいような気がしてくる。

「彼氏だから」
「……ああ、そう」

まあ、確かにそうだがもっと他に言い方はなかったのか。佐藤の真剣さを見ていると文句を言うのも馬鹿らしくなってくる。じゃあそういうことでいいか。間違ってはないし。

「じゃあもしもの時はよろしく」
「任せとけ」

何か知らんが嬉しそうだ。……いや、別にどうでもいいけど。


梅雨の役得


濡れ鼠な鈴木も見たい

2012.03.06

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