曖昧ミーマイン

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佐藤は昔、きょうけんだったらしい。
つまり、暴れまくっていたってことだ。今の佐藤からは想像もつかないがきょうけんという言葉を出すと反応が顕著だから本当なんだろう。

「鈴木は幻滅した?」
「何に」

平介はプリントを提出していないだとかで先生に呼び出しを食らっている。だから今は俺と佐藤の二人だけだ。
いきなりの主語のない問いで全てを理解出来るほど俺は佐藤と通じ合っていない。だから問いを返せば佐藤は額を机に落とした。へこんでるのか。

「きょうけんってこと知って」
「……ああ」

それか。
ある日、先輩から聞かされたそれは驚きではあった。だがそれが何故幻滅に繋がるのか俺には理解出来ない。どこに誰が誰を幻滅する要素があるんだ。

「だってさ、友達が昔やんちゃしてたってなんか嫌だったりしない?」

佐藤はずっと言わないつもりだったんだろうか。まあ、話されたところで「ふーん」で終わりそうだ、俺も平介も。

「別に。昔のことだろ」

仮に現在進行形でやんちゃだったとしても俺が被害を被らなければ好きにすればいいと思う。平介に至っては被害を被ってもうにゃらうにゃらとしてそうだ。安易に想像出来る。

「でもさあ……」

どうやら佐藤は納得していないらしい。うじうじと低温で悩んでいる佐藤に苛立つ。ので、後頭部に軽く一撃。

「いたっ」
「気にしてねーって言ってんだろ。お前はお前だろうが、うじうじすんな欝陶しい」

昔は昔だ。何をしたから知らない俺はどうでもいいとしか思えない。話したくないなら無理に掘り返そうとも思わない。というか興味がない。きょうけんがなんだ。そんな過去知っても俺には何のプラスにもならない。

「ほんと、鈴木は鈴木様々だね」
「どういうことだよ」

俺の言動がたまに果てしなく上からなのは認めよう。だが今はおかしなことを言った覚えはない。俺が眉間に皺を寄せたところで佐藤が顔を上げた。

「褒めてるんだよ」
「そうかよ」

とてもそうは聞こえなかったがな。
そう吐き捨ててみるが佐藤は話題を変える。

「そういえばこの前おいしそうな和菓子屋見つけたんだけど平介も誘って行こうぜ」
「和菓子か。抹茶もあるんだろうな」
「あると思うよ」

固執するような話題でもないから素直に新しい話題に乗っておく。

「じゃあ平介戻って来たら聞いてみるか」
「絶対ノリノリで一緒に来てくれるよね」

よく知らないが佐藤の中では何かが解決したらしい。それならそれでいい。沈んでいる佐藤というのも妙だ。

「あ、平介戻って来たみたい」
「おー、なんかじめっとしてんな。珍しい」

佐藤がとぼとぼ戻って来る平介に手を振る。調子は戻ったらしい。
なんかよく知らんがそれならまあいいか。


きょうけんの憂鬱


さとすずだと言い張る。

2011.08.29

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