曖昧ミーマイン

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「わー、佐藤。おいしそうなものを持ってんねえ」

キラキラと目を輝かせた平介の視線は俺が持っている紙袋の中身に向けられている。鈴木はその横で興味薄そうに紙袋に目をやっている。

「……ああ、バレンタインだったか」
「まあ鈴木みたいな毒舌な人間には関係ない行事ですよ」
「おい平介。関係ないのはお前も一緒だろ」
「そんなことないけど。叔母さんからチョコがもらえる」
「食い気かよ」

平介にとってはチョコを食べられる日という認識しかないみたいだ。鈴木に至っては平日とたいして変わりがないらしい。まあ、二人らしいといえばらしい。

「そんなにチョコ食べたいなら俺の分けたげようか?」

持ち帰ったら兄弟が食べるんだろうけどそれでも消化しきれるか怪しい。だから紙袋を掲げてみれば平介の目の色が変わった。同時に鈴木の眉間に皺が寄った。

「お前な、もらったものは自分で食えよ。相手に失礼だろうが」

鈴木は一応俺と付き合ってるはずなんだけど俺がチョコもらったからといって特別何を思うわけでもないみたいだ。まあ、可愛らしく嫉妬する鈴木なんて想像出来ないんだけど。
個人的な気持ちがどうこうよりも道徳的なことを諭す鈴木は俺の発言を責める。その言い分はもっともだったので平介に謝ってさっきの発言を撤回すれば平介の目がいつもみたいにやる気のない目に戻った。鈴木はそれに満足したのか鼻を鳴らして視線を逸らした。

「鈴木は優しいよね」
「はあ!?」

俺の呟きを拾った鈴木はぐりんと首を捻って俺を見た。そんな心外そうな顔しなくともいいと思う。褒めてるんだから。でも鈴木の眉間には皺が寄る。そういえばその顔はよく見るけど笑った顔ってあんまり見たことない気がする。

「誰が優しいって?くだらねえことは休み休み言え」

これ以上なく嫌そうな顔をした鈴木に何を言っても否定されるだけだろう。それがわかってるから「そうかなあ」なんて曖昧に流せば鈴木はもうその話に飽きたのか面白くなさそうに目を逸らした。


そんなことはどうでもいい


一応VD話。

2011.01.25

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