曖昧ミーマイン

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「お前達、クリスマスに予定あるか?」

薮から棒に、トムさんはそんなことを言った。いきなりそんなことを問う理由はとりあえず考えずに、俺はクリスマスの予定を考える。仕事は休みだし、幽は忙しい。誰かに絡まれさえしなければ暇だ。
そこまで俺が考えたところでヴァローナがようやく口を開く。

「クリスマス、予定。該当項目ありません。何故予定を質問しますか?」

微妙に日本語がおかしい。だがそれはヴァローナの通常でもあるので、俺もトムさんも何も言わない。指摘しない代わりに、トムさんは質問に答えた。

「予定がないなら三人でクリスマスパーティーでもしようかと思ってよ。で、静雄はどうなんだ?」

そういえば珍しいことに、俺とトムさんとヴァローナは揃って休みになっていた。
トムさんの首が、ぐりんと俺の方へ向く。そういえば俺は何も言ってなかった。

「特に何もないっす」

俺は交友関係が極端に狭い。数少ない友人も彼女や仲間と過ごすんだろう。だから俺は暇になる。まあ、いつでもだいたい暇なんだが。

「じゃあクリスマスパーティー来るか?」
「うす」

例年、クリスマスは一人だった。
幽はこの時期特に忙しいし、わざわざ実家に帰る気にもなれないし。でも今年は違うらしい。

「ちなみに、クリスマスパーティーにはケーキも出る」
「! 洋菓子ですか」

女らしく甘いものが好きだというヴァローナが即座に反応した。まあ、ヴァローナを釣るためだけではなく、クリスマスにはケーキがつきものだからおかしくはない。

「参加、肯定です」

間髪入れずにヴァローナは返答した。目は輝いている。ケーキにあっさり釣られた。
俺もヴァローナも参加。提案主のトムさんも勿論参加。
理解ある上司に、初めての後輩。これ以上ないくらい幸せなことだと思う。少なくとも、しばらく前の俺には絶対に無理だったことだ。それを今は掴めている。俺も成長出来たんだろうか。

「じゃあ当日に俺の家な。場所……はわかんねーか。静雄、ヴァローナ連れて来てくれな。俺は準備してるから」
「うす」

任されてしまった。後輩のことを任された。
これでこそ先輩って感じだ。ヴァローナはヴァローナで、ケーキが楽しみで仕方ないようだし。
他愛ないと思う。だけどそんな他愛ないことがこれまでの俺には決して出来なかった。だからこそ思う。

「よし、そろそろ休憩終わるな。続き行くぞ」
「了解です」

ああ、幸せだ。


過去形不幸者の幸福定義


取り立てでクリスマス

2011.12.07

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