曖昧ミーマイン

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俺がしっかりしなければ、と思う。

「紙コップは耐水性ポリエチレンが内側に貼られています。百十度前後までは融解しません。人体には無害」
「そういえば内側つるつるしてんな」

ヴァローナの博識が披露されるようになったきっかけは静雄が「紙コップってなんで紙なのに濡れないんだ?」と疑問を投げかけたからだ。それに律儀にヴァローナが答えて、静雄は感心している。こうしてその様子を眺めていると二人が桁外れの力を有しているとはとても思えない。

「アルコール飲料、油性食品、薬品は浸透性が強力。ポリエチレンでも長時間は防御困難」
「そうなのか……」

静雄は素直に頷いている。こうしてみるとただの青年だ。
最近、池袋はきな臭くなっている。静雄には天敵の折原臨也という男がいて、そいつがこのきな臭さに関わっていないとは言い切れない。仮に、関わっているとすれば静雄が巻き込まれる可能性は高い。
ヴァローナだって安全だとは言い切れない。邪魔だと判断されれば巻き込まれるだろう。ヴァローナは強いから目をつけられる確率も高い。いくら強くても女の子なんだから巻き込まれるようなことがなければいいのだが。と、考えていることがわかったらヴァローナは憤慨しそうだ。
静雄もヴァローナも俺みたいな凡人が心配することはないだろうと思う。だけど二人は俺の可愛い部下だから心配したくもなる。

「じゃあレンジでチン、とかもしない方がいいわけか」

さりげなく話に入ってみればヴァローナは律儀に理由までつけて肯定してくれる。

「肯定です。ポリエチレンが融解しない、断言不可。ポリエチレン、人体には無害。ですが不純物の摂取不愉快」
「まあ、そりゃそうだな」

確かにあんまり気持ちのいいものでもないか。そう納得している内にも静雄が更なる質問を投げる。また置き去りになった。まあ、いいんだけど。
俺がブレーキ役になれる、なんてことは思ってない。でも人並み外れてるこいつらは常識を無視して進む。それを制する役くらいは出来るだろう。驕りでもいい。俺がしっかりしなければ、と思う。
池袋で何か起こった時完璧に守ってやれるとまでは言わない。ただ、二人が妙な罠にはめられてしまわないように目を光らせるだけだ。

「よし、ケーキでも食いに行くべ」
「まじすか」
「賛同です。糖分摂取、脳回転上昇」

この幸福を手放すことにならないように、俺もしっかりしよう。


ジョーカーは切らせない


2011.10.20

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