曖昧ミーマイン

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静雄と俺は付き合っているらしい。
らしい、と言うのも曖昧だが断言するのも難しい気がする。何でってそりゃあ、何もしてないから。

「静雄、昼は」
「マックがいいっす」
「即答か。たまには牛丼とかにしねえ?」
「牛丼すか。それもいいですね」

俺達は毎日のように会うけど、会話はそれこそ他愛のないものでしかない。昼飯の話とかすぐに忘れてしまう程度のこととか。そんな会話しかしないけど俺達は付き合っているらしい。

「じゃあ牛丼でいいか」
「うす」

とか、そんなことを連呼すると俺が現状に不満を抱いているように聞こえるかもしれない。でも違う。俺はこのままでもいいと思ってる。それは嘘じゃない。
強いて言うなら仕事が終わってからも家に遊びに行ったり、招いたりすることが増えたくらい。それは楽しいし、悪くない。

「牛丼食うならこっちじゃないな」
「ああ、逆方向すね。引き返しましょう」

俺と静雄は足を止めると、方向を百八十度変える。それからまた歩き始めた。静雄の方がコンパスが長いのに大して距離が開かないのは、静雄が歩く速度を緩めているからだろう。そういうところは優しいと思う。誰に対しても自然に歩幅を合わせているもんだからあまり気付かないが。

「いつもマックじゃ足りねえべ?」
「まあ」

手を繋いだことはない。それ以上のことも勿論したことはない。そういう雰囲気にならないというのもあるし、それ以上に静雄が逃げているというか。力のコントロールが出来るようになってきたものの、充分とは言い難い。だから接触を極力避ける。静雄なりの処世術なのかもしれない。そうだとしたら簡単には直らないだろうし。
まあ、どんな理由があるにしても事態が動かないならそれはそれでいい。

「人、少ないといいな」
「そうすね」

うん、俺は楽しいし。


烏滸がましくも愛と呼ぶ


どっちが告白したのかは謎

2012.01.28

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