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俺とトムさんは煙草を吸う。
俺が何気なく煙草を吸っていれば隣にいたトムさんがじっと俺を見た。視線が痛くて吸いにくい。
「なあ静雄」
「なんすか」
「煙草、一本分けてくれ。丁度きらしたみたいでなあ」
トムさんはシガレットケースを逆さにして振る。本当に切らしてしまったらしい。そんなことをしなくても疑いはしないのだが。
「いいすよ」
煙草一本で渋るほど俺はケチじゃない。ポケットに手を突っ込んでもそもそと煙草を探しているとトムさんがそれを制した。
「や、新しいのじゃなくていいぞ」
「って言うと、こっちですか?短いっすよ?」
俺がくわえている煙草はもう半分は吸い終わっている。別に渡すのは構わないがあまりにも短すぎるような気がした。でもトムさんは手をぱたぱたと横に振った。
「そこまで思い切り吸いたい気分でもないから大丈夫だべ」
「そうすか。じゃあ……」
トムさんがそう言うならこれ以上渋るのもおかしい。口から放した煙草を、フィルター側をトムさんへ向けて渡す。
「サンキュな。後でシェイク奢っちゃる」
「ありがとうございます」
どう考えてもシェイクを奢ってくれるお金で煙草を買った方がトムさんは得をするような気がしたがトムさんが幸せそうに煙草を吸うので深く考えないことにした。
間接キスの可能性に気付かない二人
2011.06.22