曖昧ミーマイン

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静雄だって好きで暴力的なわけではないのだ。ただ人より少し沸点が低くて、力があるだけ。それが何より静雄から人を遠ざけてしまっているのだろうけど。

「静雄」
「はい、なんすか」

俺が呼ぶと静雄はすぐこちらに顔を向ける。素直な部下、と言えばそれまでなのだが多分それだけでもないのだろう。
多分、盛大な勘違いでなければ俺は静雄に好意を持たれている。上司や人としてなら構わないしむしろ嬉しいくらいなのだがどうにも俺に向けられているのは恋愛的な好意らしい
。男同士で、というものが存在しているのは知っていたし嫌悪感もなかったのだけどまさか自分に降り懸かってくるとは思いもよらなかった。まったくもって予想外だ。

「……トムさん?」
「あ?おお、悪い。ちょっと考え事してたわ」
「そうっすか?」

お前のことを考えた、なんて言えるわけもなくて適当に濁す。
静雄はきっと、勘違いしているのだ。古い友人と身内以外に普通に接してくれる人間なんてほとんどいないから。純粋な好意がそのまますり替わってしまっているのだろう。

「そういえばもうすぐ昼だな」
「あ、もうそんな時間っすか」
「マックでも食うべ」
「っす。シェイク頼んでいいっすか?」
「おう、頼め頼め」

ああ、そんなに嬉しそうに笑うなよ。まるで俺が悪いことしてる気分だ。俺はお前には相応しくないと思うんだよ。俺はお前が思ってるよりずっと狡い人間だ。

「……なあ、静雄。今度酒飲みに行くか?」
「へ?トムさんがいいなら」
「うし。じゃあ決まりだな」

お前の好意に気付かないふりして受け流して。それでも一途に好意を向けられ続けることに喜びを感じてる俺は本当に最低だと思う。


それでも俺は願うよ


トム静はトム←静から始まると信じて疑わない。

2010.08.28

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