曖昧ミーマイン

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静雄は臆病すぎると思う。
そりゃ確かに静雄の力は人間離れしているから気をつける必要はある。だがそこまで気を張ることはないだろう、と思わなくもない。

「……静雄」
「うえっ!?はい、なんっすか」

その驚きは何だろう。不安げにこっちを見ていることからして怒られると思っているのかこちらの意図が全く読めていないのか、もしくは両方。

「何っていうかさ……」

妙に構えている静雄に苦笑。そんなに気張らなくても。

「遠くねえか?」

距離が、遠い。
現在、田中トム宅のソファー。真ん中辺りいるトムに対し、静雄は左端に遠慮がちに腰を下ろしている。

「いや、あの、俺、端が落ち着くんで」
「じゃあ俺がそっち行くべ」
「え、」

だからその驚きは何だ。
ソファーをずりずりと這って静雄の横まで移動すれば静雄は露骨に困った顔をした。

「……あの、トムさん」
「ん?」
「近くないっすか」

拳一つ分くらいの間を空けて腰を下ろせば静雄が緊張で強張った。そんなに肩に力入れなくても。膝の上に乗った二つの拳が力を入れすぎているせいで白くなっていてなんとも痛々しい。
近いという静雄の訴えは無視して静雄の右手をとれば静雄が目を真ん丸くした。

「え、な、なんっすか……」
「うん、まあ、いいから。手、開いてみ」

そう言えば静雄は戸惑いを滲ませながらおずおずと手を開いた。その手にこちらの手を絡めてから握れば静雄は顔を真っ赤にしてからすぐに真っ青になって口を開いた。

「トムさん、あの、俺力加減出来ないんで離してください」
「俺と手繋ぐのは嫌か?」
「そんなわけないです!そりゃ嬉しいです、けど……」

トムさんに怪我させたら、とか続きそうな言葉を終わらせるために空いている方の手で静雄の頭を乱雑に撫で回す。すると「うわっ」という声と共に抗議は止んだ。
その隙にこちらの意見を言っておくことにする。

「静雄、俺はお前を信じてるよ。大丈夫。そりゃキレたら手に負えねえだろうけど普段のお前は人傷付けたりしねえべ」

大丈夫だと思う。これは本音。
臆病すぎるのだ、静雄は。大丈夫大丈夫。
そう伝えれば無言でいた静雄が俯いた。それから繋いだ手がかすかな力で握り返されて、思わず笑みが零れた。


右翼おほけなし


この二人はゆったり進展すればいい。
年上の余裕(を必死に保とうとしてる)なトムさんといつも一杯一杯な静雄。

2010.05.08

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