曖昧ミーマイン

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この職に就いてどれくらいになるだろうと考えた。俺は生まれ持った力と我慢の効かない性格のせいで幾度となくクビになり、職を転々としてきた。だから今回もそう長く続かないだろうとどこか諦めていた。しかし予想に反してクビになることはなく、自分にしてはかなり長い間同じ職に就くことが出来ている。

「静雄、腹減らねーか?」

不意に、上司であるトムさんがこちらを振り返った。彼は自分が仕事を続けられている最大の理由と言っていい人物だ。それなり距離を保って接してくれるし何をすればこちらが怒るのかわかっているらしく、そういったことはしてこない。

「そういえば、空きました」
「じゃマックでも食うか」
「そうっすね」

そう結論づけてまた歩き出したトムさんのあとを忠犬よろしく追いながらその後ろ姿を眺める。
誰にも明かしてはいないが、俺はトムさんが好きだ。でもだからと言ってどうこうしたいというわけではなくて、ただ好きだ。一般的に普通でないということはわかっているがそもそも俺自身が規格外なのでそれならば俺の抱く感情が規格外でもなんら不自然ではないだろうと開き直ってやった。うだうだ悩むのは嫌いだ。苛々する。

「静雄ー」
「なんすか」
「眉間に皺寄ってんぞ」
「……マジっすか」

少し余計なことを考えすぎたせいだ、きっと。眉間の皺を消すべく指先で眉間をぐりぐりと押していたらトムさんがそんな俺を見て小さく噴き出した。

「何がおかしいんっすか」
「いや、なんかお前ホント素直だよな」
「トムさんにだけだと思いますけど」
「へー、そりゃ光栄だ」

ツボに入ったのがまだ微かに笑うトムさんに不満げな表情を見せながらも俺はとりあえず早鐘を打つ心臓の音がトムさんに聞こえてしまうのではないかと危惧していた。


要するにそれは恋

(うるせーんだよ心臓!トムさんに聞こえたらごまかせねーだろうが!)


デュラ初書き。
二人の喋り方がいまいち掴めない。
トム←静だけど実はトム(→)←静だといい。

 
2010.04.29

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