曖昧ミーマイン

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俺は人が好きだ。個人じゃない。人類がどうしようもなく愛おしい。同じ感情でも人によって全く違う方向へ左右する。そんな予測の出来ない動きが何より楽しかった。観察していて飽きない。
そんなことを考えているから、俺には敵が多い。殺意を向けられるというのもそれはそれで興味深いから構わないのだけど。
ちなみに、俺が雇っている正臣君も俺を憎悪する人間の一人だ。憎んでいるのに、それでも必要だから仕方なく俺を利用している。そんな生き方も興味深い。

「で、調べたんですけど手掛かりはこれだけで…………聞いてます?」

淡々と報告だけをしていた正臣君が眉間に皺を寄せる。俺と余計な会話をするのは嫌だけど、上の空で話を聞かれる方がもっと嫌らしい。

「聞いてるよ。続けて?」

笑顔で続きを促せば、正臣君は不機嫌そうに続けた。

「だから俺としてはこれ以上続けても無駄だと思うんですけど、まだ続けた方がいいですか」
「もう少し様子を見てもらっていていいかい」
「……わかりました」

正臣君は露骨に信用を置いていない目で俺を見る。まあ、ここまで敵愾心を剥き出しにするきっかけを作ったのは間違いなく俺なんだけど。

「……正臣君」
「何ですか」

用件は済んだから帰りたい。そう顔に書いてあるけど構わずに続けた。遠慮してたら正臣君と話すことなんて出来ない。

「誤解があるようだけど、俺は俺なりに君を愛してるよ」
「俺を、じゃなくて人全般でしょう。日本語は正しく使った方がいいですよ」

正臣君の返答は冷たい。だかそれすらも俺には愛おしい。正確には、楽しい。歪んでいるのは百も承知だ。それでも俺はやめようとは思わない。

「君は冷たいね」
「他人を観察対象としか見てない誰かに比べたら全然ましだと思いますけど」

正臣君の言葉は冷たい。でも俺を頼らないと生きていけない。だから一定以上の悪態をつかない。それがひどく楽しい俺は歪んでいるんだろう。
そうして俺は歪んでいるからとびきりの笑顔で手を振る。

「じゃあ、よろしく頼んだよ」

すると正臣君は最高に嫌そうな顔をした。それから苦々しく答える。

「ええ、勿論」

そんなところも好きだと言ったら、更に嫌な顔をしてくれるんだろうか。


傍観者気取りの真実


臨也がMみたいな感じになってしまった

2011.11.14

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