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フォーは守り神だ。
守るから守り神であり、守らなければ存在意義がなくなってしまう。フォーはそういうもので、中でも俺は多く守られて来た。
「よお、馬鹿バク。また迷子か?」
ばちばちと電気を発生させながら壁から出現したフォーは、きょろきょろする俺を見てせせら笑う。
「断じて迷子ではない。帰り道がわからないだけだ」
「それを迷子っつーんだよ」
呆れられた。次いで、頭をべしん、と叩かれる。ぺしん、なんて生易しいもんじゃない。べしん、だ。痛い。
「何をする」
「ここに何年いるんだお前は」
「うっ!」
少なくとも八年はいる。いや、仕方ないだろう。アジア支部は大分入り組んでいて、おまけに広い。断じて俺が方向音痴というわけではない。
「おい、馬鹿バク。そっちじゃねえよ」
歩き出す俺の服をむんず、と掴むと引っ張り戻す。姿が幼いからさぞや可愛らしい力で引かれたのだろうと思うかもしれないが、そんなことはない。実に容赦なく引っ張られたせいで勢いあまってつんのめった。
「おわっ、と!……口で言ってくれればわかる」
「あたしの意見聞く気なかったろ?」
「うっ!」
……まあ、聞く気がなかったというか、うっかり聞かずに動いていた可能性は、ある。
「こっちだ馬鹿」
「おい、馬鹿馬鹿言い過ぎじゃないか!?」
ぐいぐいと俺の手を引くフォーは俺を助けてくれているんだろう。だがそんなことを否定するような勢いでフォーは俺を罵倒する。
「ほんっとに学習しねえ奴だな。迷子になるんだから一人で歩くなっての」
そう言って守り神は俺の手を引く。その小さな手を何気なく眺めていると、それに気付いたフォーはにやりと笑った。
「何ならリナリーにでも化けてやろうか?」
悪どい顔は子供みたいだったが本気でやりかねないので「結構だ!」と強めに拒否する。
するとその様子がおかしかったのか、フォーはけたけたと笑った。
何もない日くらいはこんな感じに過ごしてて欲しい