どうしてこんなことになったのだろうか。
居心地の悪い沈黙、その中で私は目の前に座っている幼なじみの視線から逃れようとしていた。
「…いい加減、学校来いよ。」
その沈黙を破ったのは、こんな状況にした本人だった。
それでも黙り込んでいた私にしびれを切らした蘭丸は自分の頭をガシガシとかきながら言葉を続けた。
「もう高3だぞ!?クラスだって変わった、いつまでくよくよしてんだよ!!」
「っ…何それ!私が学校行こうが行かまいが蘭丸には関係ないでしょ!!」
「あゆみ!」
美風藍から名前を呼ばれたが、気にせず私は二階にある自分の部屋へと逃げるように閉じこもった。
(誰の言葉も聞くものか!みんな嘘つき!信頼できる人間なんかいない!)
呪文のように繰り返される言葉に、涙が浮かんできた。
『アンタ、私たちに嘘ついてたんでしょ?』
ー…違う、誤解だ!
『応援するなんて言って、心の底では嘲笑ってたんでしょ?最低!』
ー…違う、そんな訳ない!
『もういいよ、最初から友達だなんて一度も思ったことないし。』
ー………何だそれ。
「あゆみ!!!」
「う…あ…、…っ…。」
「あゆみ…、」
「っ、うわぁああ〜ッ!!」
気がつくと、私は美風藍に抱きしめられていた。
また勝手に部屋の中にいるとか、そんなことは今はどうでもよかった。
無機質な彼の腕の中で、ただ声をあげて泣いた。
しばらくして落ち着いた私はゆっくりと身体を離した。
「…ごめん、泣いたりして。」
「別に構わないよ。」
「メンテナンス行かなきゃね…濡らしちゃったし。」
「ボクはそんなヤワじゃないよ。…それより、」
"キミが泣き止んで良かった"
そう笑う美風藍は「綺麗」という言葉がぴったりだと思った。
「…やっぱり貴方はロボットじゃないみたい。」
「"藍"って名前で呼んで欲しい。」
「藍…。」
「うん。」
人間不信な私にとって、藍が"ロボットである"という事実が安心要素だ。
だからさっきは…声をあげて泣くことができたのだ。
「……そういえば、蘭丸は?」
「あぁ、彼なら帰って行ったよ。」
「そ、そう。」
「ボクの予測によると、彼はキミに恋愛的感情を抱いているようだね。」
「!?」
思いも寄らない言葉に目をパチパチする私を余所に、藍は首を傾けた。
「恋愛的感情…男女の間に生まれるとされている、ここまでは判断できる。でも…、」
「あの、藍……?」
「…そうか!ねぇ、あゆみ、ボクと恋愛して恋愛的感情というものを教えて欲しい。」
「そうか!っじゃないけど!?」
とんでもないこと言い出したよ、このロボット!!
反射的に一歩後ずさると、逃すまいと手首を掴まれた。
「え、何か問題でもあるの?」
やっぱりどこか抜けているよ、製作側にきっと問題があるんだろうけど…
家族内恋愛なんか認められるかー!!