「屋根裏部屋はどうかしら。」
「ヤネウラベヤ…?」
コクンと美風藍の頭が左へ傾いた。
ついて来るよう促して階段を上がれば素直に付いて来る。
「ヤネウラベヤって物置場のこと?」
「いや、違うけど…これは散らかってるなぁ。」
そこは美風藍の言う物置場と何ら変わりはなく、物が散乱していた。
ずっと放置していたため、天井には蜘蛛の巣がはびこっている。
「ボクはロボットだけど、これらと同じにしないで。」
ビシィッ、と美風藍が埃を被ったパソコンを指差して言い放った。
「…私も不憫に感じたよ。」
とは言え、空いたスペースはここしかないため片付けるしかない。
仕方なくダンボールとゴミ袋を用意して整理を開始した。
「ボクはどうしたらいい?必要な物とゴミの判断がつかないんだけど。」
「じゃあ、私が散らかった物を廃除していくから床拭いて。」
「わかった。」
そう言って美風藍はさっさと床を乾拭きし始めた。
私も整理しようと振り返って散乱した物をダンボールに詰め始める。
すると、バサバサと何かが落ちる音と「うわ!」という声がして再び視線を戻した。
「だ…大丈夫?」
「一体何なの…、…写真?」
「あっ…それは…!」
散らばった書物の中にあった一枚の写真を美風藍が拾う。
幼なじみである蘭丸と、私の誕生日に撮ってもらったものだった。
「随分とブレてない?」
「それは嶺二さんが…ていうかそれ貸して。」
写真を奪い、迷わずゴミ袋に入れようとするとグイッと服の裾を掴まれた。
「その写真、捨てちゃうならボクにちょうだい。」
「…え?」
「ダメなの?」
「いや…ダメって訳じゃないけど、何でこんなものが欲しいのか理解出来ない。」
少し間が空いて、美風藍がゆっくりと私に近付いてきた。
そして蒼く光る綺麗な瞳で真っ直ぐ私を見つめた。
「"家族"って、家族の写真とかを持ち歩くんでしょ?」
「え…」
「ボクが一番欲しいモノをキミは持っている…色々知りたいんだ、キミのこと。」
「ちょっ…近…!」
ー…トンッ。
気が付くと、背中と壁がぶつかるくらい私と美風藍は距離が近かった。
「ボクを家族にして欲しい。」
「わ、わかったからっ!」
「…本当に?」
「だっ、だから離れて!」
何とか美風藍を押しのけて距離をとって少し冷静に考えてみる。
…彼は本当にロボットなのだろうか?
「何だか嬉しそう…だね。」
「嬉しい…?ボクが?」
そう言って胸に手をあてる彼はやっぱりどこか嬉しそうに見えた。