5.アイドル


『YOUはこれからMr.美風とここでルームシェアしてもらいマース!今回のプロジェクトのためにもお互いに協力し合って信頼関係を築き上げちゃって下サーイ…but、恋愛は絶対に禁止デース!!』

そう書かれた紙をもう一度目を通す・・・が、現実は変わらなかった。


ー…と、そこに。

ドアをノックする音がした。



「は、はーい…?」

「ちょっと来て。」



美風さんが私をリビングへ来るように促す。



「……これは?」

「見てわかんないの、ルームシェアするにあたってのマニュアル。」

「それは何となくわかりますけど、この字汚くて読め……、…」

「…………………………。」



コホン、と咳払いをした美風さんは無表情のまま口を開いた。



「リビングとキッチン、それからトイレにバスルームは共有し合うことになってるけど、僕はキッチンとか使わないし好きに使って良いよ。」

「あ、ありがとうございます。」

「冷蔵庫も必要ないから勝手に使って。」

「え?」

「………外食かお弁当しか食べないから。」



あぁ、そっか。

・・・ていうか今心読まれた!?



「顔に書いてあったけど。」

「ぬうゎッ!?」



驚く私を見てそれまで無表情だった美風さんが少し頬をゆるめた。



「……変な声。」

「……………。」

「…じゃ、僕もう寝るから、」



おやすみ、と甘い声で呟いた彼は自分の部屋へと入って行った。

その表情は、流石アイドルと言わんばかりに綺麗だった。

はっとして時計を見ると午前10時を過ぎているところだった。

・・・アイドルは不規則な時間に眠るんだっけな、と思いながら私は荷物を運び始めた。



こうして私たちのルームシェアは始まった。

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