50.デビューと真実


「みんな、デビューおめでとうっ!!!」


興奮覚めやらぬメンバーと春ちゃんと共に教室へと戻る。

本当に最高のステージだった!!



「…優子。」

「!、母さん。」



振り向くとそこには嬉しそうな母さんの姿があった。

言葉が見つからない私に、母さんがそっと近寄って来た。



「連れて帰る必要なんて無いわ。」

「母さん!!」

「これからも頑張りなさい。」

「はいっ!!」



・・・認めてもらえた!!

思わずガッツポーズをすると、見ていた音也君が声を掛けてきた。



「やったな、優子!!」

「うん!みんなありがとうっ!!」



それから学園長に呼ばれた私たちは、所属の手続きやらデビュー曲のコンセプトなどの説明を受けた。



「PVは今回の衣装で決まりデスー!」

「…ということは!?」

「良くやった、今日からお前はシャイニング事務所専属デザイナーだ。」

「っ、はいッ!!」



学園長…いや、社長のナチュラル日本語にはもうあえて突っ込まない。

私、七瀬優子は無事にデザイナーになりました!



*****


「お伝えしたいことがあります。」

「来てたのね、美風くん…何かしら。」

「娘さんと、お付き合いをさせて頂いています。」



僕の言葉に莉香さんは「そう、貴方が…」と微笑んでくれた。

けれど、その微笑みはすぐに真剣な表現へと変わる。



「アイドルは恋愛禁止なんじゃないかしら?美風君。」

「重々承知しています…でも、僕には彼女が必要なんです。貴方には娘さんと僕の関係を認めて頂きたい。」



そう言い切ると、莉香さんはどこか遠くを見つめる。



「……娘じゃないわ。」



その言葉に思わず目を見開く。

構わず莉香さんは続けた。



「でもね、娘のように大切なの…最後に姉さんが残した宝物よ。」

「…!」

「あの子はね、姉さんによく似て頑張り屋なの…だからこそ心配なのよ……。」



驚きを隠せない僕に問いかける。



「あの子は新人デザイナーよ、そして貴方は人気アイドル…これが2人にとってどれだけのリスクを背負うことになるかわるわよね?」



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