47.この生活…


「卒業オーディションで、ST☆RISHの皆さんを見にきます。その際にメンバーをより輝かせる衣装でなかった場合は優子を家へ連れて帰ります。」



そんな言葉を頭にループしながら…

私は作業に没頭していた。

家へ帰るなんて嫌だし、それにみんなにはデビューして欲しい!!

そのためにもデザインを見直して修正できる所は直す。



「翔くんって私とあんまり変わらないんだなぁ、身長。」

「……へぇ、僕の前で僕以外の男の名前言っちゃうんだ。」

「!、藍ちゃん来るならインターホン鳴らして下さいッ。」



私の左耳にふぅっと藍ちゃんが吐息を吹きかけた。

思わず身体が固まるとそのままぎゅっと後ろから抱きしめられた。



「合い鍵があるんだから、鳴らす必要ないでしょ…っていうか鍵掛かってなかったよ。」

「あれ、閉めたと思っ……うわぁ!」



ー…ドサッ。

という音と目の前に藍ちゃんの顔。

こ、これは所謂・・・



「私、お、おしたおされてますよね?」

「確認とってどうするのさ…あぁ、照れ隠しか。」

「決めつけ!?」

「………。」



ゆっくり藍ちゃんが立ち上がる。



「…とにかく鍵はちゃんとしめなよ、不用心でしょ。」

「はい……。」

「はぁ、なんであんな男だらけの集団に入れなきゃいけないんだか。」

「あっ、藍ちゃん学園に来てましたよね!?」

「話し反らさないでよ。」



クイッと顎を持ち上げられ、視線がぶつかった。

恥ずかしくて目を逸らすと藍ちゃんが無理やり瞳を覗き込んでくる。



「目も逸らさないで…僕のことを見て、僕だけのこと、考えてよ。ね?」

「…………。」



黙って頷くと、満足気に微笑んだ藍ちゃんが優しいキスをしてくれた。



「ところで学園来てましたよね?」

「…たまたま通りかかったんだよ。挨拶しようと思ったけど、取り込み中だったようだから辞めたけど。」



学園にたまたまって・・・あえて何も言わないけど。

もし、卒業オーディションの衣装が母さんに認められなかったら家へ帰るって藍ちゃんに言った方が良いんだろうか。

そもそも、藍ちゃんがこのマンションへ来るのもリスクが高い。

この生活はいつまで続けられるんだろう…。



「なに難しい顔してるの、ほら行くよ。」

「?、行く…どこに?」

「ベッド。」

「!?」



何を言い出すんだこの人・・・!?



「何を言い出すんだこの人…って顔をしているね、でも時計見てごらんよ。」

「23時……。」

「良い子は寝る時間でしょ?」

「まだ全然ですよ!いつもは3時に……うわぁあ!ちょ、下ろして下さいぃいっ!」

「うるさいな、近所迷惑でしょ。そんな目の下にクマ作っちゃって倒れられたら僕が迷惑なんだからね。」



今夜は添い寝決定だそうです…。



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