43.結果と……


審査の基準は見た目、実用性、値段…と色んな視点で評価するらしい。

私が寿さんに選んだ服はどれもあまり知られていないブランドで、シンプルなデザイン。

あまり重々しくならないように、けれどしっかり暖かいように。

気をつけた点を寿さんにチェックしてもらって、存分にアピールしてもらった。



あとはただ信じて待つだけ。



私は祈るように静かに目を閉じた。











「今回の優勝者は………七瀬優子さんですっ!!!」




*****

マネージャーを呼び出し、車に乗り込むと僕の肩に頭を乗せて優子はすぐ眠りについた。

規則正しい寝息になんだか僕まで安心して、口元が緩んでしまう。

そういえば、前にもこうやって肩を貸してあげたことがあった。


ふと鏡越しにマネージャーと目が合う。



「随分と気に入っているんですね。」

「何が言いたいの?」

「別に何も…、…到着しました。」



ああ、肩が凝った。

僕の肩で爆睡するとか……帰ったらお仕置き決定だね。



「優子、起きて。」

「ん……?」



眠気なまこでこちらをじーっと見つめて、すぐにへにゃっと微笑んだ。

ああ、もう。

マネージャーもいるのに、そんな可愛い顔してむかつく。



「行くよ。」



無理やり優子の手を引いて社長室のドアをノックすると、「入ってマース!」といういつもの返事がした。



「…ほら、優子。」



まだ意識がハッキリしていない彼女の背中を軽く叩くと、はっとしたように口を開いた。



「あ…えっと……優勝しました!!着ぐるみのバイトも、ちゃんとやってきました!!」



優勝トロフィーを差し出すと、社長はニヤリと笑った。



「ほほーぅ、さっすがデスネー!そんなに美風サンが好きデスかー!」

「はい!…でも、デザイナーの勉強も同じくらい大好きなんです!!」



そう言うと社長は彼女を静かに見つめる。



「…わかった、お前たちのことは特別に許しやる。しかし世間にバレないよう最低限のマナーは守れ。」

「はいっ!!」



今までで1番最高の笑顔で、彼女が僕に笑いかけた。

…しかしこの時、彼女にとって最大の問題が残っていた。


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