42.彼の正体
遊園地を走る参加者たち。
僕は客席に移動して大画面で中継を見ていた。
『ほら急げ〜!時間きちゃうよ〜?』
『ちょ、走るの早…っ痛いです!』
そこで見たのは何度も顔を合わせている同業者が優子の腕を引いているところ。
ープツン、とそこで映像が他の参加者へ切り替わった。
「人のものに何してんの…全く。」
****
上から下まで慎重に選んだ。
見た目だけでなく、防寒のポイントもしっかり掴んだはず。
イベントが始まってから45分が経過し、私たちは会場のステージへと戻ることになったのだ。
あああ、緊張するぅ!!
「ど、どうしましょうこれで本当に大丈夫でしょうかっ!!」
「落ち着いて〜七瀬ちゃん。きっと大丈夫だよ!僕、寿嶺二がモデルなんだものどーんっと構えてなさい♪」
「っ!?、こ、ことぶ…ぶっふ!!」
「ちょ、マジで大丈夫〜??」
・・・寿嶺二。
どこかで見たことあると思いきや、よく聞く名前のアイドルじゃないかっ!!!
「もしかして…、気づいてなかった?」
「うっ。……ごめんなさい。」
「えぇ〜嶺ちゃんショック〜…。」
そんなやりとりをしつつ、会場にたどり着くとなんと客席から藍ちゃんの姿を見つけた。
あれ、なんか機嫌悪い??
ー…ドンッ。
「うわっ!」
「七瀬ちゃん!!」
不意に寿さんが声をあげる。
よそ見していた私は階段に躓き、そのままステージ上へダイブ・・・・
しそうなところで、パッと身体を支えられた。
顔をあげれば、そこにはこのイベントのMCを勤める人気アイドルの顔が目の前に。
「よそ見してると危ないよっ??」
「す、すみません!」
「気をつけてねっ☆」
「はい、ありがとうございました!」
トキヤくんの双子のお兄さんのHAYATOさん……2人とも優しいんだなぁ。
感謝をしながらステージに立つと、次々に参加者が息を切らして集まってきた。
モデルさんたちが彼に歩き、参加者のみんなが投票を入れる。
スタッフの方々が忙しそうに客席から集計を始めた。
「さぁーて、今年は誰が優勝するのかにゃあ〜!?」
いよいよ結果が決まる・・・!!
緊張のなか、私は必死で客席から藍ちゃんを探す。
そして目が合い、藍ちゃんは口を開いて私にこう伝えたんだ。
それは私が欲しかった言葉で・・・
『大丈夫だよ』
ー…って、真っ直ぐ私を見ていた。
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