39.訪れるピンチ



「…甘すぎなくて、美味しいよ。」



シュークリームを一口、ペロリと赤い舌を見せて藍ちゃんが言った。

その言葉に嬉しさで頬が緩む。



「藍ちゃんはカロリー気にするから、気をつけて作ったんです。」

「うん、良い子。」



薄い唇が綺麗な弧を描いている、藍ちゃんの微笑み。

やっぱり、アイドルなんだ・・・・・。

なんてことを考えながら思わず見とれてしまう。

さすがに見つめすぎたせいか、藍ちゃんの頬が少しずつ赤くなり始めてきた。



「なに…?」

「えっ、いや!!何も!!!」

「ふーん………?」



尚も疑った様な顔で藍ちゃんが私との距離を詰めてくる。

そして壁まで追い詰められる。



「"キスしたい"?」

「!」

「…当たり、みたいだね?」

「ちがっ……ん…」



ー・・・突然、唇を塞がれて、目の前には好きな人がいて。





熱に浮かされているその時だった。






『恋愛は禁止と言ったはずデース!!ラブラブNON、NON。』

「「…!?」」



ー…ハラリ。

壁から社長が出てきたのだった。



「ちょっと、不法侵入なんだけど。」



藍ちゃんが冷静に言う。

…いやいやそこじゃないでしょ!!??



「ミーはここの持ち主なんよ、そしてたった今…Ms.七瀬との契約は切れマシタ。」

「あ……。」

「わかったらとっとと荷物をまとめて出ていけ。」

「!」



この人、フツーに喋れるんだ…。


ってそうじゃなくて!ヤバいよね?
今の状況マズイよね!?



「だったら僕も彼女と行く。」

「………何?」

「今の僕には優子が必要だから。」



そう言った藍ちゃんに社長は「そうか…」と呟いた後、私たちを見つめた。

そして再びゆっくりと口を開いたのだ。



「チャンスをやる」…と。




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