37.本当のこと


翔くんの双子の弟、薫くんがやって来て一週間が過ぎた。



「お前はもう帰れ。」

「翔ちゃんが心配で帰れないよ。」



見ての通り、2人の気持ちは平行線上のままです…。

この日は私に加え、春ちゃんとST☆RISHのメンバーも翔くんと薫くんのやりとりを目の当たりにした。

でも、薫くんは何をそんなに心配しているんだろう……?



「七瀬さん、だったよね?」

「は、はいっ。」

「本当に翔ちゃんが好きなの…?」



チラッと翔くんを見ると顔がちょっぴり赤い。

他のみんなは「え?」というような顔をしてこちらを見ている。

それでも私は、思ったことを素直に伝えることにした。



「翔くんはみんなに優しくて、いつも元気いっぱいの笑顔を見せてくれる。だから…、」

「わかってない!」

「え……?」

「翔ちゃんが元気だなんて、無理してるだけだよッ!」

「やめろ、薫!!」



どうゆうこと・・・・?

今にも泣き出しそうな顔で、薫くんが翔くんを見つめた。

みんなも神妙な面もちで翔くんに視線をぶつけた。



「…みんな、ずっと黙っててごめん。俺、…俺は、心臓に疾患を抱えている。」



その場の空気が一変する。



「そんな大事な事、どうして今まで黙ってたんだよ!!」

「……ごめん。」

「…シノミーは知っていたのかい?」



レンくんの質問に那月くんは困ったような顔をして口ごもる。



「…ごめんなさい。」

「那月は悪くない、俺がみんなには何も言わないように頼んだんだ。」

「…あの…それで、具合はどうなんですか?」



春ちゃんが小さな声で言った。

そう、今大事なのは翔くんの体調。

これから卒業オーディションがあるんだ……だから翔くんは今まで頑張ってきたんだ。



「50%…、」

「言うな!!」

「…、翔ちゃんはッ!50%の確率で手術するつもりなんだッ!!」



遂に薫くんの瞳から涙が溢れた。
翔くんは決めていたらしい。

アメリカで手術を受けて、元気になったら卒業オーディションに出る。

例え成功する確率が50%だとしても手術を受けたい。元気になりたい。


その気持ちは、みんなに届いた。



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